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個人投資家の強みと弱み

はじめに

一般に、個人投資家は機関投資家に比べて不利だと言われます。その大きな理由は、恐らく資金力の違いでしょう。機関投資家は、その圧倒的な資金力を武器に、株価に大きな影響を与えます。

資金力の他にも、機関投資家は頭脳明晰なアナリストやファンドマネジャーが多数在籍していますし、膨大な情報を分析し、最適な投資先を選定できます。また、投資検討先企業の関係者に直接インタビューができることも挙げられます。このように考えると、さまざまな点で機関投資家が有利(=個人投資家は不利)と思えます。

しかし、本当にそうでしょうか。

機関投資家には機関投資家ゆえの弱点があり、個人投資家には個人投資家ゆえの強みがあります。ここでは、個人投資家、機関投資家それぞれの強みと弱みを整理し、本当に個人投資家は不利なのか、ということを考えてみます。

なお、私は機関投資家としての実務経験はないため、あくまで私の個人的な見解になります。また、結論としては「個人投資家は決して不利ではないよ」という事を言いたいため、客観的な考察よりも、個人投資家を贔屓した内容になってしまいました。悪しからず。

1.個人投資家・機関投資家の強みと弱み

まず、個人投資家と機関投資家それぞれの強みと弱みを整理してみます。いろいろとあるでしょうが、大きく分けると以下のようになると思います。

表 個人投資家と機関投資家の強みと弱み

ここで、太赤字は最大の強み太青字は最大の弱みと私が考えているものを示しています。

どうでしょうか。こうして書き出してみると、機関投資家の弱みがたくさん見えてきます。逆に、個人投資家の弱みはそこまで多くなく、むしろ強みの方が多そうです。

機関投資家は顧客の資金を運用し、その運用利益から手数料をもらうことでビジネスが成り立っています。他人の資金を運用する以上は説明責任を果たす必要があり、運用するにもさまざまな制約がかかることになります。それに比べて、個人投資家は自分の資金を自分の責任の範囲内で運用しているため、全ての判断を自分で下すことが可能になります。

以下、個人投資家と機関投資家それぞれの強みと弱みについて、具体的に考えてみます。

2.個人投資家の強みと弱み

まず、個人投資家の強みと弱みについて考えます。

2-1.個人投資家の最大の強みは「自由なこと」

1.で示したとおり、個人投資家の強みはいくつかありますが、その中で最も大きなものは、何と言っても「好きな銘柄を好きな時に買える」「現金の保有割合が自由」の2点でしょう。これらのことは、個人で運用している者にとっては当たり前のことですが、機関投資家には許されません。

先にも述べたとおり、個人投資家は自分の資金を自分の責任において運用しています。当然ながら、投資をする上で他人に何かを縛られることはありません。仮に損失を出したとしても、自分の資金が目減りするだけで、何か責任が発生するわけではありません。

他にも、個人投資家は精神的なプレッシャーが小さいということも強みとして挙げられます。機関投資家は、他人の資金を、それも莫大な金額を運用する必要があるため、その重圧は半端ではないと思います。もし失敗すれば、他人の資金を減らしてしまうだけでなく、失職する恐れもあります。

「私、失敗しませんから」

などと言いながら投資を楽しめる心臓に毛が生えたようなツワモノも中にはいるのかもしれませんが、ほとんどの運用担当者は、日々かなりのプレッシャーの中で戦っていることと思います。

その点、個人投資家は自分の責任の範囲内で運用をしているため、他人の資金を減らしてしまうかもしれない、あるいは失職するかもしれないという心理的な負担・不安とは無縁です。日々相場が上下する中で常に冷静かつ合理的な判断を下す必要があることを考えると、プレッシャーや責任がないという事は、思っている以上にありがたいことだと思います。

以上、ここまでの内容から、個人投資家の強みは「自由なこと」であると総括できそうです。

2-2.個人投資家の最大の弱みは「キーパーソンに話を聞けないこと」

個人投資家の最大の弱みは、経営陣などのキーパーソンに話を直接聞けないことです。情報格差は確実になくなってきているため、個人でも機関でも得られる情報の質や量はそこまで変わりません(情報の鮮度では個人が不利だとは思いますが)。ですが、経営の中枢にいる人間に直接話を聞けるかどうかという事は、かなり大きいと思います。こればかりは、どう頑張っても埋めることのできない決定的な差です。

経営トップに直接ヒアリングをすることができれば、その人の能力や誠実さを確認することができます。個人的には、経営者の能力と人柄が、長期的に見て株価に大きな影響を与えると考えています。モーニングスター社のパット・ドーシー氏の著書「千年投資の公理」の中では、経営者の能力は企業の成長とは一切関係ないと喝破されていますが、決してそんなことはないと思います。

また、経営陣にヒアリングができれば、競合企業の情報なども得られるでしょう。いくつか書籍を読んでいると、投資を検討している企業の経営者にヒアリングをして競合企業のことを聞いた場合、実は競合企業の方が投資先としては有望だった、ということが結構あるそうです。

このように、どれだけ下調べをしてみても、経営陣にヒアリングをしなければ得られない情報が確実に存在します。そして、そういった情報こそが、投資をする上で極めて重要な判断材料になり得ます。

しかし、ある程度の情報であれば、企業のIR担当者に電話をかけるなどして確認することができます。経営トップに話を聞くことに比べればそこまで踏み込んだ情報を得ることはできないにしても、投資家への対応窓口として企業が担当部署を設けている以上、法律の許す範囲内という条件付きで、確認したいことについてはきちんと回答を得られると思います。

そういうわけで、「キーパーソンに話を聞けない」という個人投資家の弱みは、「キーパーソンに話を聞くことはできないが、キーパーソンの代理(企業IR担当者)に話を聞くことはできる」という事で納得するしかなさそうです。

3.機関投資家の強みと弱み

次に、機関投資家の強みと弱みについて考えます。

3-1.機関投資家の最大の強みは「キーパーソンに話を聞けること」

機関投資家の最大の強みは、キーパーソンに直接話を聞けることでしょう。個人投資家の最大の弱みが、機関投資家の最大の強みという事になります。財務分析や企業価値評価については、ざっくりであれば個人でもできます。そして、個人の責任の範囲内で運用している以上説明責任は問われませんから、ざっくりとした評価で十分です。

2-2.の内容と重複しますが、経営者が優秀かつ誠実であることが、投資先企業に求める絶対的な条件です。ビジネスの仕組みそれ自体も確かに重要ですが、経営トップの果たす役割はかなり大きいです。ですが、個人投資家が経営トップの資質を判断することはほぼ不可能です。できることと言えば、企業が公開しているIR情報を読む、決算説明の動画を見る、業界誌を読む、と言った、投資家であれば誰でもできることに限られます。頑張っても、株主総会に出席して自分の目と耳で直接確認するくらいでしょう。

機関投資家の他の強みとしては、「自分のアイデアを検証できる」という点が挙げられます。というよりも、検証せざるを得ないという方が正しいかもしれません。機関投資家は、上でも述べたとおり、「良いな」と思った企業の株を即座に購入することはありません。本当に利益が出るのか、仮に損失を出した場合、顧客にきちんと説明できるか、ということをチームで検証することが求められます。

しかし、個人投資家にはこれができません。基本的に全ての判断を自分で行う必要があるため、自分の失敗から学ぶ以外に方法はありません。書籍から学んだり誰かの失敗談を読んだり聞いたりすることはできますが、毎回プロ集団からフィードバックを得るなんて贅沢なことは不可能です。この点は、とても羨ましく思います。

次に、多くの個人投資家が強みとして挙げる「資金力」ですが、これは、強みであると同時に弱みでもあります。資金規模が大きいということは、それだけ制約が多くなるという事です。1.で示した表でも記載していますが、資金が大き過ぎると、どうしても自由な取引ができなくなります。

一日の売買代金も大きくなければ取引が成立しませんし、欲しい株を買うだけでも、大量に購入する必要があるため、株を購入する過程で株価が上がってしまいます。そのため、大きな資金を全て飲み込めるだけの売買が日常的に行われている企業に投資先を限定する必要があります。

売る時も同じです。大量に保有している株を売るためには、当然ながらそれだけ買いたい人がいる必要があります。そうすると、株を売る過程で株価は下がりますし、下手をすると買い手がおらずに売るに売れない状況になる…という事も起こります。

どれだけ良い企業が見つかったとしても、一日の出来高や売買代金が少ない企業だと、大量の資金を投資するにも、買い手がほとんどいないという事になってしまいます。そのため、将来有望と思われる成長企業を見つけたとしても、その企業が小~中堅企業であれば、投資を見送らざるを得ないということもあります。

よって、単純に資金が大きければ大きいほど有利であるとは言いきれません。もちろん、個人投資家に限れば資金は大きいに越したことはありません。全て自分で判断でき、自由度が高いからです。資金の多くを現金化しておくこともできます。

3-2.機関投資家の最大の弱みは「他人の資金を運用していること」

機関投資家の弱みはいくつかありますが、結局のところ、最大の弱みは「他人の資金を運用していること」だと総括できそうです。これを弱みと言ってしまうと、機関投資家であること自体が弱みであると言っているようなものですが…。機関投資家は、機関投資家であるがゆえに、個人投資家からすれば当たり前のことができません。

1.で示した表のうち「個人投資家の強み」に記載した内容のほとんどすべてが、機関投資家にはできません。まず、機動力に欠けます。先にも述べましたが、この企業は良いな、と思ったところから、企業を調査し、会議で議題に上げ、承認を得るまでは投資を実行に移せません。会議で承認を得られなければ、そもそも投資できません。これも、人さまの大切な資金を預かって運用する上では外せないことです。ですが、その間に株価は上がってしまうかもしれません。

加えて、機関投資家はフルインベストメントが原則です。

個人的に、機関投資家にとってもっとも厄介と思われるのが、フルインベストメントの原則です。これは、顧客から預かっている資金は、原則として全て何かに投資する必要があるという事です。個人投資家であれば、不景気など相場が悪い期間は資産を全て現金に変えておき、景気が上向いてきたタイミングで再び投資をスタートする、といった選択ができますが、機関投資家はできません。

機関投資家の仕事は顧客の利益を最大化することであるため、相場が悪いからと言って現金をずっと持っておくことはできません。株式以外にも多くの金融商品があるため、その時々の状況に合わせて最適な投資先を選ぶ必要があります。そして、どのような状況でも利益を上げることが求められます。安易に「不景気で資金が減ったら困るので現金にさせて下さい」などと言おうものなら、顧客の立場からすれば「ここは本当に大丈夫か?他のファンドに資金を移そうかな…」と考えるのが自然です。

このように、機関投資家にも弱みがたくさんあります。資金が大きいとか、頭脳明晰なアナリストがたくさんいるから、といった理由だけで、個人投資家は不利だなどと考える必要はありません。

4.結論:個人投資家は決して不利ではない。むしろ有利

ここまでの内容から、個人投資家は決して不利ではない。むしろ有利であると結論付けたいと思います。個人投資家の強みはそのまま機関投資家の弱みになるため、そこを積極的に攻めることができますが、個人投資家の弱みはある程度補完できるため、そこを機関投資家に付け込まれることはありません。

機関投資家を意識するよりも、投資を検討している企業のことをじっくりと調査したり分析したりすることに時間と労力を費やす方がよほど建設的です。

兎にも角にも、個人投資家万歳!ということでここは締めたいと思います。

5.機関投資家に惑わされないために

よく「個人投資家は機関投資家にカモにされる」と聞きますが、そんなことはありません。実際、これまでの経験上、「機関投資家にしてやられたな」と思ったことは一度もありません(単に気づいていないだけなのかもしれませんが…)。この点について少し乱暴な言い方をすれば、「機関投資家にカモにされると(個人投資家が)勝手に思い込んでいるだけ」なのではないでしょうか。

機関投資家の動きを気にしているのは個人投資家だけであり、機関投資家は個人投資家の動きをそれほど気にしていないように思います。出来高の推移などから機関投資家の動きを読み、機関投資家がこっそり買い増ししていると思われる企業の株を買う(順張り)というのも一つの戦略だと思います。ですが、それに失敗すると、高値掴みをしてしまい、結果として機関投資家にカモにされた…ということになってしまうかもしれません。

では、どうすれば機関投資家に惑わされずに投資をすることができるでしょうか。

私が個人的に最も良いと思うのは、思い切って無視するというものです。機関投資家の動きを予測しようとしたり利用しようとしたりせず、ただ純粋に、業績の良い企業の株価が外的要因によって一時的に下落しているタイミングを見計らって購入し、あとは上がるまで待つ。これを繰り返す方が、長期的に見れば確実なように思います。

もちろん、会社四季報や有価証券報告書などから株主構成を確認して機関投資家(外国人投資家含む)の株式保有割合やその推移をチェックし、それにより機関投資家が買い増しているのか、それとも売ろうとしているのかを考えたりすることはあります。しかし、基本的には企業の業績が安定的に右肩上がりであることが投資の絶対条件であり、機関投資家の動向はあくまでも参考程度に確認するのみです。

もし、今までに何度も高値掴みで損失を出してしまった経験があるのであれば、試しに機関投資家の動きを読むという事を一切辞めてみてはどうでしょうか。

おわりに

ここまで見てきたとおり、個人投資家は機関投資家に対して決して不利ではありません。機関投資家にも弱みはたくさんあります。そもそも、機関投資家の存在をそこまで気にする必要はありません。容易に利用できる情報は利用すればよいですが、機関投資家の動きを読んでなんとか利用してやろう、というような考えはお勧めできません。難しいからです。

機関投資家を出し抜いて利益を上げるよりも、いっそ機関投資家のことは忘れて、業績が安定していて今後も成長しそうな企業を探し、その企業にコツコツ投資をするべきです。もしかしたら、機関投資家が注目し始めて株価が一気に上がるかもしれません。それが、機関投資家の力を活用する一番良い方法だと思います。それをありきで考えるのではなく、優良企業を探してコツコツ投資をしていたら、後から機関投資家も買い増しを始めた…という流れが理想です。

個人投資家は決して不利ではないという事を理解した上で、個人投資家の強みを存分に発揮して投資を楽しみましょう。

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