Loading

ブログ

逆張りとリスクの関係について

はじめに

一般に、リスクとリターンは比例します。「ハイリスク・ハイリターン」の取引と「ローリスク・ローリターン」の取引はあっても、「ローリスク・ハイリターン」の取引は理論上ありません。ですが、それを達成する方法があります。それは逆張りを基本に投資をするというものです。

ここでは、多くの個人投資家が実践している逆張りという投資スタイルを使ってローリスク・ハイリターンを達成するための方法を、リスクとリターンの関係から考えてみたいと思います。

1.ファイナンス理論におけるリスク

1-1.リスクの定義

ファイナンス理論上のリスクの定義は「先行きの不透明感の大きさを数値化したもの」です。不透明感という言葉は、不確かさ、不確実性などとも言い換えられます。あるいは、リスクが高いことをボラティリティが高いとも言います。例えば、以下の図に示すAとBの2つの投資案件を比較した場合、リスクが高いのはどちらかを考えてみます。

図 リスクのイメージ

案件Aは、右肩上がりに上昇しており、案件Bは、右肩下がりになっています。これを見ると、右肩下がりになっている案件Bの方がリスクが高いように思えますが、リスクが高いのは案件Aです。なぜなら、案件Aの方が、案件Bと比べて値動きが激しくなっているからです。値動きが激しいという事は、将来の値動きが読みづらいという事です。今は右肩上がりでも、振れ幅が大きいため、急上昇したかと思うと次の瞬間には急落してしまうかもしれません。今後どうなるのか予想がつかないため、リスクが高いと判断されます。

一方、案件Bはそれほど激しく値動きすることなく右肩下がりになっているため、今後も恐らく下降し続けるであろうと容易に予想できます。これがもし株価であれば、案件Bは放っておけば倒産してしまうかもしれないため、リスクが高いように思いますが、これまで説明してきたとおり、リスクとは倒産する可能性の高さを指しているわけではありません。

長期的に赤字が続いているような倒産の危機にある企業は、単に存続が危ういだけであって、リスクが高い企業ではありません。赤字が続いて倒産の危機にある企業を投資先として選んではいけないことは明白です。案件Bを待ち受ける未来は容易に想像がつくため、リスクは低いと判断されます。

ここまで述べてきた内容を踏まえると、リスクが高い案件とは値動きが激しい案件であるため、急落する危険もありますが、急上昇する機会もあるという事になります。つまり、ファイナンス理論上のリスクという言葉には、危険と機会(すなわち「危機」)の両方の意味が込められているという事になりそうです。

ちなみに、企業価値を構成する3つの変数で紹介した、割引率を算定する上で出てくる変数ベータ(β)は、この考え方に基づいて設定されます。ベータは、ある企業の株価の振れ幅を市場平均(日本であれば日経平均)の振れ幅と比較して、「企業の株価の振れ幅 > 市場平均の振れ幅」であれば「β > 1.0」となり、「企業の株価の振れ幅 < 市場平均の振れ幅」であれば「β < 1.0」となります。つまり、市場平均の振れ幅を「β=1.0」とし、それ以上の振れ幅であれば市場平均よりもリスクが高い、それ以下の振れ幅であれば市場平均よりもリスクが低いとみなします。

図 ベータ(β)のイメージ

ここではベータ(β)に関する詳細な議論には立ち入りませんが、いずれにしても、ファイナンス理論上のリスクとは「先行きの不透明感の大きさを数値化したもの」であり、「株価が下落し続けることではない」と覚えておいて下さい。

1-2.リスクとリターンの関係

本来、リスクの高さとリターンの高さは比例します。投資でもギャンブルでも、リスクの高いものはリターンも高くなりますし、リスクの低いものはリターンも低くなります。これは当然のことで、高いリスクを取る以上、高いリターンを要求しますし、リスクが低ければ、それなりのリターンで満足しなければなりません。ましてや、リスクが高くてリターンが低い投資など誰もしようとは思いません。

どんなものでも、リスクが高い方がリターンが高くなるように価格が調整されます。そうでないと、誰もリスクの高い資産を買わなくなるからです。

例えば、現時点で同じリターンが期待できる2つの投資案件があったとして、そのうちの1つがリスクが無い案件C、もう1つはリスクがある案件Dであるとします。今、この2つを同じ価格で購入できるものとして、同時に取引をスタートします。

すると、当然ながら無リスクの案件Cに買いが殺到し、リスクのある案件Dは誰にも買われずにむしろ売られます。そうして一定期間取引を続けると、無リスクの案件Cは価格がどんどん上昇し、リスクのある案件Dは価格が下落します。

このようにして、2つ投資案件における価格とリターンが調整されることで、無リスクの(あるいはリスクが低い)投資案件Cは価格が高くなり、したがってリターンが低くなります。反対に、リスクがある(あるいはリスクが高い)投資案件Bは価格が低くなり、したがって高いリターンが期待できることになります。

図 リスクとリターンの関係

こうして、理論上は、リスクとリターンは最終的に比例する関係に落ち着きます。しかし、ここで1つ注意しておくべきことがあります。それは、リスクを取ることと高いリターンを得られることは全く関係がないという事です。これは当たり前のことですが、どうしても「ハイリスク・ハイリターン」という言葉を聞くと、「ハイリスクな投資=高いリターンを得られる投資」と言うように解釈してしまいます。この点について、少し述べておきたいと思います。

1-3.リスクとリターンを考える上での注意点

ローリスク・ローリターンの取引は、「損失が出るリスクが低い=リターンを得られる確率が高い」であり、ハイリスク・ハイリターンの取引は「損失が出るリスクが高い=リターンを得られる確率が低い」ということになります。リスクが高い投資案件については、高いリターンが約束されているということではなく、単純に「リスクが高い(つまり、損失が出る確率が高い)のだから、それ相応のリターンを要求できなければ投資家としては納得いかない」のであって、「高いリスクを取れば、高いリターンを得られる」わけではありません。

多くの場合、高いリスクを取れば高いリターンを得られると思いがちですが、高いリスクを取ることと、高いリターンを得られることは別です。高いリターンの方にばかり意識が行ってしまい、高いリスクを取るという事の本来の意味が薄れてしまうことには注意が必要です。

2.株式投資におけるリスク

ここまでの内容で、ファイナンス理論上のリスクの定義と、リスクとリターンの関係について理解できたと思います。しかし、株式投資をする際に、1-1.で述べたようなことをリスクとして意識している投資家はいるのでしょうか。

実際のところ、株式投資をする上でのリスクとは、自分の購入した株の価格が下落してしまうことであり、それにより損失を被ることのはずです。結果的に利益が得られるのであれば、自分の購入した企業の株価の変動幅が市場平均と比較して大きかろうが小さかろうが関係ないのではないでしょうか。むしろ、振れ幅が大きいことを利用して利益を得る投資家も多数います。

このように、株式投資をする上でのリスクとは、単に株価が下落してしまうことであり、ファイナンス理論上のリスクとは異なります。

さて、株式投資におけるリスクが単に株価の下落であるとするならば、株式投資におけるリスクの高さは、その株をいくらで購入したかという買値が大きなポイントとなります。なぜなら、買値が安ければ安いほど、それ以上下落する可能性は低くなるわけですから、安く買えれば買えるほど、リスクは低くなると言えます。

また、安く買えば買うほど株価が上昇した時の利益も大きくなるわけですから、リターンも大きくなります。つまり、株式投資に限れば、株価が下がれば下がるほどリスクは下がり、同時に得られるリターンは大きくなる、つまり、ローリスク・ハイリターンな投資が可能になるという事が言えそうです。

図 ローリスク・ハイリターンな取引のイメージ

では、どうすればローリスク・ハイリターンな投資ができるのか。それは逆張りというスタイルが可能にしてくれます。

3.逆張りでローリスク・ハイリターンを狙う

逆張りとは、何らかの理由で株価が下落した場合、そのタイミングで株を購入する投資スタイルのことです。これとは反対に、株価が下降トレンドから上昇トレンドに入った初動を捉え、そのタイミングで株を購入する投資スタイルのことを順張りと言います。いずれのスタイルもそれぞれメリットとデメリットがありますが、これについては次で述べることとして、ここではひたすら逆張りスタイルのメリットについて述べていきたいと思います。

逆張りの最大のメリットは、この記事のテーマでもある「ローリスク・ハイリターンな投資が可能になる」ということです。この理由はこれまでにも述べてきたとおり、株価が安くなればなるほど下落リスクは低くなり、同時に株の購入単価が下がるため、株価の上昇によって得られる利益を最大化することができます。

一般に、逆張りで利益を得ることは初心者には難しいと言われます。逆張りの投資スタイルでは、株価が下がったところを狙って購入するため、当然ながら、その後どこかのタイミングで株価が上昇に転じることを前提としています。しかし、そのまま株価が下がり続ける可能性もあります。そのため、きちんと企業を分析し、自分なりの根拠と自信を持って株を購入する必要があります。

ですが、株を購入する際に企業を分析するのは当たり前のことであり、それを避けて利益を得られるとは考えていません。企業の分析方法については、多くの書籍から学ぶことができます。当サイトでも、企業分析の基本的な内容については書いていますので、合わせて参考にしてみて下さい。

逆張りの2つ目のメリットは、投資のチャンスが意外と多いという事です。例えば、企業の決算発表前後です。決算は四半期に一度あり、企業によって決算時期はバラバラなので、投資チャンスは多いと言えます。決算期では、業績が良いにも関わらず、市場コンセンサスに達しなかったがために株価が暴落することがよくあります。こうした場合、長期安定的に業績を伸ばしている企業は、比較的早い段階で株価が回復することが多いため、チャンスと言えます。なお、株を購入するタイミングなどについては、売買のタイミングで書いていますので、詳しくはそちらを参考にしてみて下さい。

長期的に見て、株価は企業の業績に連動します。そのため、業績が好調であるにも関わらず市場の短期指向によって株価が大きく下げた時を狙って買い進める逆張りの投資スタイルは、まさにリスクを下げてリターンを上げるための最良の方法と言えます。この方法は、企業の業績が良いという事実を根拠に投資判断をしているため、これに勝る安心感はありません。

4.逆張りにも当然リスクはある

逆張りのデメリットは、上でも書いたとおり、購入した株の価格が下落し続けるリスクがあるということです。これにより、最悪の場合は投資資金がゼロになります。逆に、順張りでは株価が下落している間は購入しないため、このリスクを回避することができます。これが順張りの最大のメリットであり、初心者には順張りがおすすめと言われる理由でもあります。

逆張りでは上記のようなリスクがあるため、株を購入する際は企業を詳細に分析しておく必要があります。きちんと分析した上で株を購入しておけば、購入後株価が下落し続けるといったリスクは概ね回避することができます(もちろん、期待とは裏腹に損失を出してしまうこともあります)。

ここで大切なのは、単に下落しているからという理由だけで「割安だ」と判断して株を購入するというのは誤りであるという事です。年初来安値まで下がったとしても、それは単に「この1年間で株価が最も低い」だけであって、「この1年間で株価が最も安い」という事ではありません。株価が低いことと株価が安いことは同じように見えますが、違います。株価が安いという場合、何か価格を判断する基準があって、それと比較して価格が低くなっていて初めて安いと判断できます。

モノを買う時のことを思い出せば分かりますが、例えば「通常であれば1万円出さないと買えないものが、何と今なら5,000円で買える。これは割安だ」というように、本来の価格と現在の価格に差があるからこそ割安だと言えるのです。普段何かを買う時は当たり前のようにしているこうした判断が、株式投資になると、とたんに基準が曖昧になります。「年初来安値だから割安だ」とか「昨日より10%下げたから買いだ」と言った調子です。

多くの場合、株価が大きく下げる時には何らかの理由があります。その理由が致命的なものであれば、株価の長期的な下落は避けられません。そのような致命的な理由によって価格が下落している株を購入しないためにも、株価が下がった時は、焦らず、必ず、「株価が下がった理由は何か」という事を確認するようにしましょう。そして、その理由が致命的ではなく一時的なものであれば、思い切って株を購入しましょう。

5.投資資金の大きさで許容できるリスクは異なる

株価が下がった理由が一時的なものであれば、思い切って株を購入する勇気が大切ですが、その際に1つ注意すべきことがあります。それは株価が下落したタイミングで全ての資金を一度に投じてはいけないということです。今後もしばらくは下げ続ける可能性があるため、少しずつ買い増す必要があります。

株価が下落すると、割安なうちにできるだけ株を購入したいがために、焦って全ての資金を投じてしまうことがあります。しかし、その翌日も、翌々日も、さらにそれ以降も、株価は下がる可能性があります。こうなってしまうと、株価はどんどんお買い得価格になるにも関わらず、それらを購入する資金がなくなってしまいます。それと同時に含み損が膨らんでいくため、気持ちは焦るばかりです。そして、耐えられなくなって損切りしてしまうというのがよくあるパターンです。

図 損失を出すイメージ

こうした状態に陥ることを回避するためにも、株価が下落した直後に株を購入する場合は、かなりの余剰資金を残しておくことが大切です。多くても、一度に投じる資金は全体の1/5程度までとすべきです。もっと低くても良いでしょう。いずれにしても、当分の間は下落が続くことを前提として、最低でも5回以上に分けて少しずつ購入することが望ましいと言えます。もし、少し買っただけで株価が上昇してしまったら、大きな利益は取り損ねるかもしれませんが、購入した分は利益が出るので、それで満足すべきです。

図 利益を得られるイメージ

欲を出してしまうと、必ずと言っていいほど損失を出します。もともとローリスクで購入した株なので、ローリターンであっても満足しましょう。株価がそれなりの期間にわたって下落を続け、その間に低価格で十分購入できれば、それはラッキーな「ローリスク・ハイリターン」の取引だったのであって、それが当たり前と思ってしまわないことが大切です。

結局のところ、投資に充てられる資金の大きさによって、許容できるリスクは異なることになります。投資資金が大きければ大きいほど余裕を持って株を購入できますし、仮に損失を出したとしても、全体への影響も小さくなります。あなたの投資資金と許容できるリスクを十分に考慮した上で、逆張りスタイルによって着実に利益を積み上げて下さい。

おわりに

逆張りとリスクについて長々と書いてきましたが、私は逆張りのスタイルが自分に合っていたというだけで、順張りで利益を出し続けている投資家もたくさんいます。そのため、どちらがいいのかと聞かれると、正直なところ「人それぞれです」としか答えることができません。

しかし、もし今の投資スタイルが順張りで、どうにも高値を掴んでしまい損失が出てしまう、という場合は、一度逆張りという方法を試してみると良いと思います。もしかすると、逆張りこそがあなたにぴったりの投資スタイルなのかもしれません。

株式投資における期待と願望の違いについて

長期投資=低リスクではない

関連記事

  1. 株式投資で利益を得るためには、経済学よりも行動経済学を学ぶ方が効果的だと思う

    2018.03.21
  2. 【ウィリアム・J・オニールの成長株発掘法】逆張りスタイルの投資家をはじめ、すべて…

    2018.08.03
  3. 【他人の経験から学ぶべし】株式投資においては「失敗から学ぶ」ことが命取りになるこ…

    2018.07.13
  4. 低PER・低PBRの銘柄は必ずしも割安ではない

    2018.01.18
  5. 個人投資家の強みと弱み

    2018.01.17
  6. 長期投資=低リスクではない

    2017.11.21
PAGE TOP