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低PER・低PBRの銘柄は必ずしも割安ではない

はじめに

株価が割安かどうかを判定するための代表的な指標として、PERPBRの2つが挙げられます。PERは10倍程度以下であれば割安と判断され、PBRは1.0倍程度以下であれば割安と判断されます。この2つの指標は算出式がとてもシンプルで簡単なこともあり、株式投資を始めたばかりの人でも直感的に割安株を探すことができます。

しかし、シンプルなものほど奥が深いという格言は、この2つの指標にも当てはまります。単純に「低PER・低PBR=割安」と判断してしまうと、重要な視点を見落としてしまうことになりかねません。低PERでも決して割安とは言えない銘柄もあれば、低PBRが、単に「存続が危うい危険な状態」を示している可能性もあります。

ここでは、PER、PBRそれぞれの意味や算出式をまず簡単におさらいし、次に、低PER・低PBRの銘柄が割安となるための条件を考察します。ここで挙げる条件に該当しない銘柄は、たとえ低PER・低PBRであったとしても、割安ではない可能性が高いという事になります。この記事を出発点として勉強を重ね、本当の意味で割安と言える銘柄を見つけられるようになりましょう。

1.PERとPBRの意味

株式投資を始めたばかりの方もいると思いますので、まずはPERとPBRの意味について簡単にまとめておきます。既に知っているから読む必要がないという場合は、飛ばしてください。

1-1.PERの定義と算出方法

PER(Price Earnings Ratio:株価収益率)とは、現在の株価が1株当たり純利益(EPS)の何倍であるかを示す倍率評価指標のことで、以下の2通りの式で算出できます。

上記2式のうち、(PER-2)は(PER-1)の分子と分母にそれぞれ発行済み株式総数を掛けているだけなので、どちらの式も同じ意味になります。単位はともに「倍」です。株式投資をする上では、時価総額で考えるよりも1株当たりの価値や価格で考えることが多く、使い勝手も良いため、一般的には(PER-1)の式を使います。なお、1株当たり純利益(EPS)とは、企業が1事業年度で得た売上高から、費用や税金などを全て差し引いて得られる最終利益(純利益)を発行済み株式総数で割ることで算出できます。

PERは、現時点の株式が足元利益の何倍程度で取引されているかを示すものであるため、PERが低ければ低いほど、企業が稼いでいる利益の割りに株価は安いという事になります。例えば、EPSがともに50円のA社とB社があるとします。ここで、A社の株価が500円、B社の株価が1,500円で取引されているとします。この時、A社のPERは10倍(=500/50)、B社のPERは30倍(=1,500/50)であり、純粋にPERのみで割安判定を行うと、A社の方がB社に比べて割安という事になります。

しかし、そんなに簡単に割安株を見つけることはできません。PERが10倍でも、翌年には7倍、翌々年には5倍になるかもしれません。このような株を割安だと思い込んで購入してしまうと、長期間にわたって株価が低迷している、いわゆる万年割安株を掴んでしまうことになりかねません。

「割安」という言葉は、「価値の割りに安い」と言える場合に使用するべきであって、単に「価格が安い(=PERやPBRが低い)」場合に割安と思い込まないように注意することが必要です。割安株投資では、価値の割りに安い価格で取引されている株を今のうちに購入しておき、近い将来、市場が価値を見直す、あるいは価値がさらに高くなることによって株価が上昇することを期待します。

株価が上昇するためには、企業が成長して1株当たり純利益(EPS)が大きくなる必要があります。つまり、割安株とは、今後も継続的にEPSが成長する企業であることが前提になります。これは、PBRを用いて割安株を探す場合でも同様です。このあたりについては、この記事の後半で詳しく書いています。

1-2.PBRの定義と算出方法

PBR(Price Book-value Ratio:株価純資産倍率)とは、現在の株価が1株当たり純資産(BPS)の何倍であるかを示す倍率評価指標のことで、以下の2通りの式で算出できます。

上記2式も、PER算出式と同様の理由からどちらも同じ意味になり、一般的には(PBR-1)の式を使います。単位はともに「倍」です。なお、1株当たり純資産(BPS)は、企業が保有する純資産を発行済み株式総数で割ることで算出できます。

PBRは、現時点の株式が、企業の保有する1株当たり純資産(BPS)の何倍程度で取引されているかを示すものであるため、PBRが低ければ低いほど、企業が保有している純資産額の割りに株価は安いという事になります。例えば、BPSがともに500円のA社とB社があるとします。ここで、A社の株価が500円、B社の株価が1,500円で取引されているとします。この時、A社のPBRは1.0倍(=500/500)、B社のPBRは3.0倍(=1,500/500)であり、純粋にPBRのみで割安判定を行うと、A社の方がB社に比べて割安という事になります。

しかし、これもPERと同様にそんなに単純な話ではありません。PBRが1.0倍を下回ることはそこまで多くはありませんが、株式投資で利益を得るには、近い将来株価が上昇する必要があります。株価がずっと低迷していたのでは、いくらPBRが1.0倍でも、決して割安とは言えません。

企業の目的はのれんの創出です。そして、のれんの創出力を表している指標がPBRです。企業の価値は、ヒトやモノ、ブランドなど、貸借対照表には表れない無形資産(のれん)によって生み出されます。このことを前提とすれば、PBRが1.0倍以下という事は、その企業はこれまでの事業活動の結果、純資産の価値以下の価値しかない、つまり、株主が要求している超過価値を生み出せていないと市場が判断しているという事になります。市場からの撤退を要求されていると言っても過言ではありません。

そういう意味で、PBRは企業の収益力を測るための重要な倍率評価指標であり、割安銘柄を探すというよりは、むしろ「のれんの創出力が秀でた企業(=企業価値が高い企業)を探す」という考え方の方がしっくりきます。なお、こうした考え方について、詳しくは以下の記事で書いていますので、合わせて参考にしてみて下さい。

1-3.PERとPBRの関係

これまで述べてきたとおり、PERとPBRは、株価が割安かどうかを判断するための指標としてよく利用されます。証券会社が提供するスクリーニング機能などを使えば、「PERが10倍以下、かつPBRが1.0倍以下」というような形で条件を入力することで、その条件に該当する銘柄を探すことができます。

「PERが10倍以下、かつPBRが1.0倍以下」の銘柄と言えば割安株の代表格のように思えますが、決してそうではありません。PERとPBRは、ROEを介して繋がっています。以下に示す関係式を理解しておくことで、PERとPBRが低いとはどういうことか、という事を理解した上で割安銘柄を探すことができるようになります。

割安に放置されている銘柄はほとんどないと言うのが個人的な考えですが、もしPERとPBRを用いて割安銘柄を探すのであれば、この2つの関係性について理解しておくと役に立ちます。

PERとPBRは、以下の公式で関連付けることができます。

この式は極めて重要であるにもかかわらずあまり知られていないため、ぜひ覚えておいて下さい。ここで、ROE(Return On Equity:自己資本利益率 or 株主資本利益率)とは、企業が有する純資産(株主が出資した資金)を使い、どの程度の利益を出しているかを確認する指標のことで、以下の2通りの式で算出できます。

ファンダメンタルズ分析に基礎を置いて投資をしている人でこの指標を確認しない人はいないのではないでしょうか。それほど重要な指標です。なお、ROEの算出式には、分母に「純資産(自己資本)」と示していますが、厳密には、純資産、自己資本は定義が異なります。また、同じような意味の用語で株主資本というものもあります。しかし、ここではざっくりと理解することを目的とするため、純資産=自己資本=株主資本として簡易的に考えるものとします。

ROEの単位は「%」であり、この値が高い方が、株主が出資した資金を効率的に活用して利益を出せているという事になるため、優秀な企業であると言えます。ただし、高ければ高いほど良いかと言うとそうでもありません。なぜなら、ROEは企業が有する総資産のうち、銀行などから借り入れている負債を考慮せずに算出する指標だからです。

総資産に占める負債の割合が大きければ大きいほど、総資産に占める純資産(≒自己資本≒株主資本)の割合は小さくなり、結果としてROEは高くなります。したがって、ROEだけを見て投資判断をすることは危険という事になります。PERもPBRもROEも、その他の財務指標も、どれか1つだけを見て投資判断をすることはできません。それぞれの関連性を理解した上で、総合的に判断を下す必要があります。

なお、ROEはさらに「収益性×効率性×安全性」という形で3つの構成要素の積に分解できます(デュポン式)。ですが、ここでそのことについて触れると長くなり過ぎるため、関連する記事を以下にまとめてあります。これについても重要な内容なので、合わせて参考にしてみて下さい。

さて、「PBR=ROE×PER」の関係式を知っていると、例えばPBRもPERも低ければROEも低くなる、あるいは、PBRが高ければ、PERもROEも高くなる、といったことが分かります。なぜPBRが低いのか(高いのか)、なぜPERが低いのか(高いのか)を公式から確認することで、「低PER・低PBRの銘柄=割安」という誤った認識を修正し、適切な判断が下せるようになります。これについては、1-4.1-5.で述べます。

余談ですが、PERについては、企業価値の代表的な評価方法であるDCF法(Discounted Cash Flow:割引キャッシュフロー法)とも繋がっています。というよりも、根本的には同じです。この記事ではあくまでもPERとPBRについて書いていきますので、PERとDCF法の関係については、以下の関連記事を参考にしてみて下さい。

ここまで、PERとPBRそれぞれの定義と算出方法、そしてPERとPBRがROEを介して繋がっているという事を見てきました。以降は、これまでの内容を踏まえ、PERが低いとはどういうことか、PBRが低いとはどういうことか、という事について書いていきます。

1-4.PERが低いとはどういうことか

PERが低いという事は、以下の2つのうちのどちらかという事になります。

  1. PBRもROEも低い
  2. PBRもROEも高い

先に示したPERとPBRの関係式である「PBR=ROE×PER」から考えると、PERが低いと、それに引きずられてPBRも低くなります。しかし、ROEがずば抜けて高ければ、PERの低さをROEの高さが補うことで、結果としてPBRも高い値となります。つまり、PERもPBRも低い企業というのは、必然的にROEも低くなるという事です。

ROEは、企業の実力を見る上でとても重要な指標であり、ROEが低い企業に好んで投資をするという事はあまりありません。そう考えると、上で述べたスクリーニング機能を用いて、例えば「PERが10倍以下、かつPBRが1.0倍以下」の企業を探す場合、必然的に「ROEが10%(=0.1)以下」の銘柄が抽出されることになります。

ROEが10%ならば日本企業の中では優秀と言えますが、極めて優秀な企業に厳選して投資をしたいことを考えると、ROEは15%程度以上が望ましいと考えます(もちろん、負債が少なく自己資本比率が70%程度以上であることが前提です)。PER、PBR、ROEは企業によってさまざまであるため、将来有望な割安銘柄を探すのであれば、ROEが安定的に高いことを条件として、その中で低PERの企業を探すことが賢明です。

1-5.PBRが低いとはどういうことか

PBRが低いという事は、以下の3つのうちのいずれかという事になります。

  1. PERもROEも低い
  2. PERが低くROEが高い
  3. PERが高くROEが低い

1-4.と同様の理由で、PBRが低い企業は、PERとROEのいずれか、もしくは両方が必ず低くなります。PBRが低くなるという事は、PERとROEのどちらか一方が高い数値であっても、もう一方の低い数値に引きずられていることになるため、PERとROEのどちらが高い数値(低い数値)を示しているのかを確認することが重要です。

もし、上で示した「3.PERが高くROEが低い」のであれば、投資先としては有望ではない可能性が高いと言えます。ROEが低いという事は利益率が低いという事であるため、利益創出力があまりないにも関わらず株価は高いという事になります。

逆に、「2.PERが低くROEが高い」のであれば、投資先として有望である可能性があるため、詳細に調べてみると良いかもしれません。ただし、この場合も焦って投資をしてはいけません。以降でも述べるように、PERが低いという事は「足元の利益額(EPS)の割りに株価が安い」だけであって、この利益額(EPS)が今後も継続して成長するかどうかが肝心です。

PERが低くても、例えばその企業が成熟期に入っており、足元の利益額が過去最高域に達しているような場合は、今後の長期的な成長は望めない可能性が高いと言えます。このような場合、今後は良くて横這い、悪ければ競合企業にシェアを奪われて減益となるかもしれません。株価を押し上げるために必要なのは、とにもかくにも「売上高・利益の成長」です。

2.低PERや低PBRの銘柄が割安となるための条件

PERやPBRは、その企業の将来性を市場(投資家)がどのように捉えているかで決まります。今後も成長することが期待されている企業のPER、PBRは必然的に高くなります。そのため、PER、PBRが低い銘柄で割安と言える企業はほとんど見つかりません。しかし、低PERや低PBRの銘柄が割安となる場合があります。

結論から言えば、「その企業に直接関係ない外的な要因によってPERやPBRが低くなっている銘柄は割安の可能性が高い」という事になります。当然といえば当然ですが、このようなケースがどのような状況で生じるのかという事について、以下に説明します。

2-1.経済危機や不景気を理由に、リスク回避のために投資家が資金を回収している場合

経済危機や世界的な不景気になると、当然ながらリスクの高い資産からリスクの低い安全な資産に資金が移ります。そうすると、これまで株に資金を投じていた多くの投資家が保有株を売却して現金化するため、その過程で株価は暴落します。ですが、ここがチャンスです。

こういうケースでは、業績の善し悪しに関わらずほとんど全ての企業の株価が下がるため、いわゆる「外的要因」によってどの企業の株も一時的にバーゲン価格で売りに出されることになります。株価の低迷が長期間継続することを覚悟しなければいけませんが、代わりに、通常であればあり得ないほどの低価格で優良企業の株を買うことができます。

もちろん、経済危機や不景気ではどの企業も少なからず打撃を受けるため、それにより倒産したり致命的なダメージを受けてしまっては、投資としては失敗に終わります。このような時こそ、焦らずに企業をじっくりと分析し、景気の回復とともに早い段階で業績・株価が回復すると期待できる成長企業を探しましょう。企業の分析方法については、当サイトでもいろいろと紹介していますので、ぜひ参考にしてみて下さい。

2-2.単純に、割安に放置されている場合

ここまで何度も「割安に放置されている企業はほとんどない。あっても稀だ」と書いてきましたが、そのような稀な企業を探すためのある程度の指針があります。それは「機関投資家が投資先として選べない(選ばない)成長企業を探す」というものです。成長企業かどうかは、企業の決算書類を確認すればある程度は分析が可能であるため、あとは「どのような企業が機関投資家にとって投資先となり得ないのか」を知っておけば良いことになります。

株価に大きな影響を与えるのは、個人の投資家ではなく、プロである機関投資家です。大規模な資金力を武器に、株価を押し上げたり押し下げたりします。しかし、機関投資家は資金力の大きさゆえに、投資先をある程度限定する必要があります。具体的には、一日の売買代金が小さい中堅・小規模の企業にはあまり投資できません。

他にも、例えば地方に本社がある企業の中に、もしかすると割安に放置されている優良企業があるかもしれません。有名企業は、その多くが東京か大阪に本社を置いており、機関投資家も同様です。そのため、機関投資家からすれば、わざわざ地方に出張するよりも東京に在籍する多数の企業を調査する方が楽なのです。

機関投資家(アナリスト)がまだ注目しておらず、したがって無名である企業は、単純にあまり知られていないというだけの理由から、株価が割安に放置され、それが低PER・低PBRという形で表れている可能性があります。このような「機関投資家がまだ注目していない成長企業」に早い段階で投資をすることができれば、他の個人投資家やプロが投資を検討し始めた時、株価は大きく上昇する可能性があります。

3.高PER・高PBR銘柄は必ずしも割高ではない

ここまで、低PERや低PBRの銘柄は必ずしも割安とは限らないということを見てきました。これは言い換えれば、高PERや高PBRの銘柄が必ずしも割高ではないという事でもあります。過去最高のPERの数値を示していた企業の株価が、その後も上昇を続けることはよくあります。

上でも述べたとおり、業績が安定して上昇している有望銘柄の株価が割安(=低PERや低PBR)で放置されていることの方が稀です。仮に、業績が伸びていて割安に放置されている企業が見つかった場合、「なぜこの企業の株価はこんなに安いのか、何か見落としていることはないか」と一度は疑ってみるべきでしょう。

何か見落としている問題がある、あるいは、その企業の利益水準が既にピークに達している、といった結論が得られるかもしれません。もし利益水準がピークに達している場合、足元の利益は最高でPERは低い数値を示していても、今後の長期的な成長は望めない、むしろこれからは衰退する可能性が高いと市場が判断していることになります。

そういう意味では、PERやPBRの低さを銘柄選択の基準にしている場合、これから大きく成長するかもしれない企業を全てふるい落としてから投資先を選んでしまっている可能性が高いという事になります。PERが高いという事は、足元の利益水準に対して株価が高いことを意味しますが、これは同時に、現時点の利益水準がまだまだ低く、今後の成長余地があることを示唆しています。

そして、市場はその将来の成長を期待しているがゆえに、高い株価、高いPERという形で評価しているわけです。仮に、今PERが30倍の企業があったとしても、翌年以降の1株当たり純利益(EPS)が1.5倍、2倍…と増えていくことが期待できるのであれば、それに伴ってPERは20倍、15倍、…と低くなります。

当然その頃になれば、その時の期待に応じた新たな株価、新たなPERになっていますが、それが株価の上昇という形で表れているという事になります。それにより、あなたは株価の値上がり益を手にすることができます。もし、PERやPBRを指標に投資をしていてうまくいっていないのであれば、これを機に見直してみると良いかもしれません。

おわりに

PERやPBRは、シンプルかつ有効な指標として個人投資家も機関投資家も参考にする指標です。これをうまく活用すれば、割安株を見つけることができるかもしれません。ですが、これまで述べてきたとおり、1つの指標の数値だけを見て投資判断を下してしまうと、万年割安株を掴んでしまうことになりかねません。

ここでの内容を参考に、PERやPBR、ROEなどの各種財務指標の関連を意識し、いろいろな視点から評価を行って真の割安株を探せるようになりましょう。

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