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株式投資をする上で絶対に無視できない「ファット・テール」という魔物とどう向き合うべきか

ファット・テールとは、平均から極端に離れた事象の発生する確率が、正規分布から予想される確率よりも高くなる現象のことです。株式投資でいえば、理論上は発生確率が限りなくゼロに近いために無視しても良いと考えられている大暴落(大暴騰)が、決して無視できないような頻度で発生する現象を指します。

このファット・テールという現象をどう乗り越えるかが、長期的な投資成績を大きく左右します。平常時にどれだけ利益を積み重ねても、たった一度の大暴落で全てを失う可能性があるからです。いつかくる大暴落に備えて、自分なりの対処方法を今から考えておくことはとても大切なことだと思います。

この記事では、米国と日本の両国において過去にどの程度の頻度でどの程度の規模の暴落・暴騰が起こったのかについて簡単に紹介するとともに、株式をはじめとした金融商品の値動きを考える上で避けては通れない「正規分布」の考え方についてごく簡単に触れます。そして最後に「実際に大暴落が起こった時に、個人投資家はどうするべきなのか」という事に対する個人的な見解を述べます。

理論と現実の間には埋めようのない乖離が存在するという事を前提として、それに対してどのように対処し、その結果として自分自身の資産を如何に守るか、という事に焦点をあて、個人投資家ができる極めて現実的な対処方法について考えます。

1.ファット・テールは、決して無視できない頻度で起こる

壊滅的な損失をもたらす大暴落は、決して無視できない頻度で起こります。

以下の表は、1950年1月3日~2017年9月8日までの米国株騰落率の上位20日分のデータについて、その発生確率と合わせて示しています。

表 米国株騰落率上位20日

出典:ファイナンス理論全史-儲けの法則と相場の法則 ダイヤモンド社、2017.12 著者:田渕直也

この表にある「何年に一度の確率か」という部分を見ると、こうした暴落・暴騰は、理論上は決して起こり得ないという事が良く分かります。発生確率が「”6×10の97乗年” に ”1度” だ」と言われても、数字が大きすぎて、もはや想像ができないほどです。

一般に、株式をはじめとした金融商品の値動きは、正規分布に従うものと仮定して計算されます。

正規分布とは、以下に示すように平均を中心として左右対称に広がる分布のことで、平均から離れれば離れるほど発生確率は小さくなり、平均から極端に逸脱した事象の発生確率は限りなくゼロに近い数値、つまり無視してもよいほど小さくなります。上で示した米国株の騰落率上位20日の発生確率も、正規分布を仮定して計算されています。

図 正規分布のイメージ

周知の事実ですが、日本でも米国と同様の大暴落(大暴騰)が過去に何度も発生しています。

以下に示す図は、1949年5月16日~2018年7月20日までの日経平均株価の日次騰落率を集計し、正規分布を仮定してグラフ化したものです(データの正確性を保証するものではありません。間違いがあるかもしれませんが、ご容赦ください)。

図 日経平均株価の日次騰落率(1949年5月16日~2018年7月20日)

これによれば、上記期間において5%を超える暴落が42回、そのうち10%を超える暴落が3回起こっています。株価の値動きが正規分布に従うのであれば、これらの大暴落が発生する確率は限りなくゼロに近いはずです。ですが、実際には何度も発生してます。

これらの事実は、株価の値動きが正規分布には従わないという事を示しています。では、どのような分布に従うのか。

株式をはじめとした金融商品の値動きは、正規分布ではなく、実際には「べき分布」に従うことが現在では分かっています。べき分布がどういうものかをイメージするには「ファイナンス理論全史-儲けの法則と相場の法則」という書籍の説明が分かりやすいと思うので、少し長いですが以下に引用します。

べき分布とは、確率分布を表す式が何らかの”べき”(xのk乗というような式)になっているものを指す。パレート分布ともいう。…(途中省略)

もう少し具体的に言うと、「所得が、べき分布に従う」と言う場合には、所得がa倍になるとそれに該当する人の割合はb分の一になるというような関係を意味する。たとえば年収500万円の人が500万人いるとしよう。年収が倍の1000万円の人が100万人なら、年収が2倍になると該当者は五分の一になるということになる。この関係がずっと続いていくのがべき分布なのだ。その結果、年収2000万円の人は20万人いて、年収4000万円の人は4万人いて、という関係が延々と続いていき、とんでもないほどの年収を稼ぐ人が一定数は存在することになる。

だから、身長が平均の何倍というような人がまず絶対にいないのに、所得では平均の何十倍というような極端な高給取りが存在する。それがべき分布の世界なのである。

出典:ファイナンス理論全史-儲けの法則と相場の法則 ダイヤモンド社、2017.12 著者:田渕直也

株式の値動きがべき分布に従うのであれば、上の引用と同じように、平均から大きく離れたとんでもない値動きを示すことがあるという事も頷けます。

ただ、ここで大切なのは、株価の値動きがどの分布に従うのかということではなくて、「ファット・テールは、決して無視できない頻度で起こる」という事実と、それが発生すると「二度と立ち上がれないような壊滅的な損失を被る可能性がある」という事です。

私たちは、このような未曽有の大暴落が発生した時に、できる限り損失を小さく抑え、自分自身の資産を守らなければいけません。そのためにできることを今から考えておくことは、決して無駄ではないはずです。

2.個人投資家ができる最良の対処方法は、「成行売り」の「損切り」

未曽有の大暴落が起こった時に、私たち個人投資家ができる最良の対処方法は、「成行売り」を使った「損切り」です。個人的には、これ以上の対処方法はないと現時点では考えています。

兎にも角にも損切り。

これ以上に確実かつシンプルな資金防衛手段はありません。これは、資金規模が比較的小さく、かつ、他人(顧客)に対して責任を負っていない個人の投資家だからこそできる方法です。

ここで、成行注文とは、買値(売値)を指定しない売買方法のことです。通常は、○○円になったら買おう(売ろう)というように、価格を指定して取引を行う「指値注文」が一般的です。ですが、非常時、つまり「なんでもいいからとにかく一刻も早く持ち株を売りたい!」という時には、細かい値段を気にしている余裕はありません。

欲を出して「1円でも高く売りたい…」などと考えて指値注文を出しているうちに、株価はどんどん下がります。一刻も早く取引を成立させて心の平穏を取り戻すために、多少損失が膨らんだとしても、注文を出したら即座に取引が成立する「成行注文」を使うべきです。

1円単位の小さな金額を気にして指値注文にこだわっていると、最後まで取引が成立せずに結局売ることができなかった…なんてことにもなりかねません。これが一番危険です。

また、自身の保有する企業が如何に将来有望であろうとも、売ることをためらってはいけません。

下落相場が訪れた時に忘れてはいけないことは、「市場に逆らってはいけない」ということです。何かが引き金となって暴落が起こったのだとすれば、その暴落は始まりに過ぎず、当分の間は下落が続くことになります。そして多くの場合、ほとんどすべての株式が下落相場に飲み込まれて価格を下げることになります。

このような時には、とにかく持ち株をすべて処分して現金化し、市場で何が起こっているのか、世界で何が起こっているのかを冷静かつ客観的に把握することに努めるべきです。

下落相場が続くことを期待して空売りを仕掛けたり、テクニカル指標から「売られ過ぎ」のシグナルを読み取って買い注文を出す…なんてことはしない方が良いと思います。うまくいけば短期間で大儲けできますが、ほとんどの場合、うまくいきません。少なくとも私は、下落相場を利用して利益を出す自信も技術も経験もありません。

大暴落が起こった時などは、ほどんどの場合はパニックに陥って冷静な判断ができません。にも関わらず、「この下落を利用して稼げないか」という欲が出てきたりします。これはダメです。確かに、実際に大金を稼ぐ人もいますし、それがメディアで取り上げられて騒がれたりもします。

ですが、そんなものはガン無視です。それは極めて特殊な例なのであって、だからこそメディアで騒がれるのです。決して「あなたにもできる!」的なことではありません。悔しいですが、そんな風に割り切る方が安全です。株価の暴落時に私たちが一番に意識すべきことは、暴落を利用して利益を出すことではなくて、損失を最小限にとどめて心の平穏を維持することです。

そして、そのための最も確実な方法が「成行売り」「損切り」です。現時点で、リーマンショック以降の大暴落は起きていませんが、いつ、どのような規模の大暴落が起こるかは誰にも分かりません。起こってから対処方法を考えるのでは遅すぎます。今のうちに、心構えをしておくに越したことはありません。

3.他にも意識しておくべきこと(私見)

3-1.現金の保有割合は常に3~5割確保しておく

現金の保有割合を常に高めに保つことは、個人的には必須の戦略です。ここぞというタイミングで有望な株式を購入する資金を残しておくため、という目的もありますが、それ以上に、現金を保有しておくことで平常心を保つことができるというのが大きな理由です。

”利益を出すことよりも損失を出さないことを優先する”

このルールを遵守するためには、いつでもなるべく平常心を保ち、間違った行動をできる限り減らす必要があります。平常時に平常心を保てなければ、大暴落が起こった時に冷静に対処できるはずがありません。未曽有の事態が生じたときの備えという意味からも、自分自身がいつも平常心を保てる投資スタイルを考えるべきだと思います。

そして、その一つの方法が、現金の保有割合を常に高めに確保しておくことだと考えています。くどいようですが、最も安全な金融資産は現金です。現金の保有割合をなるべく3~5割確保しておき、異常と思われる下落が見られたら即座に成行の売り注文を出す。これで、壊滅的な損失はほぼ回避できると思います。

3-2.チャートから市場の動向を把握する技術を身につける

バブルの崩壊や金融危機、その他さまざまな出来事に端を発する株価の暴落・低迷は、多くの場合、短くて数ヵ月、長くて数年続きます。そして、いつか市場が底をつき、回復に向かいます。逆もまた真で、株式市場が長期的な上昇トレンドを描いていたとしても、それが永遠に続くことはありません。いつかは天井を迎え、また下降トレンドを描くようになります。

上でも少し触れましたが、どれだけ高成長が期待できる有望な銘柄でも、市場が低迷している時はその流れに逆らうことはできません。業績は順調に成長していたとしても、市場全体が下落している時はどの企業の株価も引きずられるように下落します。

問題は「市場がいつ天井を迎え、いつ底をつくのか」を予測する確かな方法がないという事です。これが予測できれば、株式をいつ買っていつ売るべきかという、株式投資において最も重要かつ難しい問題を解決できてしまうことになります。

ここでの提案は、その「市場の天井と底を予測する技術」を、チャートの読解を通して身につけてみませんか?というものです。

これが無責任な提案であることは承知しています。私自身、市場の動向を把握する技術を持っているわけではありませんし、市場の底と天井を正確に予測できるとも思っていません。専門家ですら市場の動向を読み誤るのに、ごく一般的な個人の投資家にそんな離れ業ができるのか、というのが正直なところです。

ですが、市場が底をつく時、あるいは天井をつく時に、その前後で株価の出来高と値動きにどのような特徴があるのか、その動向を分析することで、ほんの少しでも特徴を見出せる可能性はあると考えています。実際、以下の書籍ではその方法が詳細に述べられています。

この書籍で書かれている方法を学ぶにはある程度まとまった時間が必要になる上、学んだからといって市場の動向を掴めるようになる保証もありません。ですがそれでも、学ぶ価値は十分にあると考えています。私はこれから、チャートから市場の動向を把握する方法についてじっくりと勉強するつもりです。

ある程度形になってくれば、当サイトでも紹介していきたいと考えています。そういうわけで、3-2.の内容は、私の経験や考えをお伝えするというよりも「どうなるかまだ分からないけど、チャートの分析方法を一緒に勉強しませんか?」という提案として認識してもらえればと思います。

おわりに

兎にも角にも、損切り

当たり前の結論に落ち着いてしまいましたが、これ以上に確実な対処方法はありません。平常時は8%ルールに従って問答無用で損切りすることを義務化し、未曽有の大暴落が起こった時、あるいは、良く分からないけれど市場が暴落していてパニックに陥りそうな時は「成行売り」で必ず損切りすることです。決して「指値」で売ろうとしてはいけません。

利益を出すことよりも損失を出さないこと

これを最優先事項として位置づけ、遵守し続けることができれば、壊滅的な大失敗はおおむね回避することができるものと考えます。もちろん、何が起こるか分からないのが株式投資の世界であるため、100%確実と言い切ることはできませんが…。

※参考文献

この記事を書くにあたり、以下の書籍の内容を参考にさせて頂きました。

この書籍は、タイトルのとおりファイナンス理論の歴史を具体的かつ分かりやすく解説してくれています。「ファイナンス理論全史」という壮大なタイトルに見合うだけの内容の濃さと、何と言ってもその分かりやすい文章が魅力です。難しい内容を簡単に書くことが如何に難しいかを現在進行形で痛感している身としては、この書籍から学ぶことは多岐にわたります。

この書籍も、留学先に持参して何度も読み返しています。ファイナンスの歴史に興味がある方、ぜひ一度手に取ってみて下さい。ランダムウォーク理論から行動ファイナンス(行動経済学)、さらには人工知能に至るまで、ファイナンス理論の変遷を網羅的に解説してくれています(2017年12月の出版)。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。この記事が役に立ちましたら、シェアして頂けたら嬉しいです。よろしくお願いします。

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