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分析の流れ

はじめに

ここでは、企業の財務分析の流れについて見ていきます。

財務分析は幅広く、様々な考え方があります。また、分析に使用する指標も多々あります。1つの指標だけを見ても、分析する企業の業種によっては極めて重要になることもあれば、逆に、ほとんど確認する必要がなくなったりすることもあります。

そのため、ここで全てを網羅して解説する事は出来ませんが、基本的な分析の流れを知っておけば、全ての財務分析の基礎として位置付けることができ、分析する企業の業種によってその都度指標の見方(重要度)を変えるといった形で応用ができると思います。

ここでは、分析の流れを解説することを目的としているため、各指標の説明は省略します。

各指標の詳細については、財務分析(分析指標 -基本編-)を参考にしてみて下さい。また、ここで扱っていない財務指標については、財務分析(分析指標 -応用編-)にまとめていますので、合わせて確認してみて下さい。

なお、一般的には指標として扱わないものもあるかもしれませんが、株式投資をする上で確認すべきものについては、分析指標と同列に扱うものとし、紹介するようにしています。

必要に応じて取捨選択、あるいは追加し、分析に役立ててもらえればと思います。

1.財務分析の基本はPBR = ROE×PERの分解から

財務分析は、PBR = ROE×PERの分解から始めます。この関係式を知らない人もいると思いますので、ここでしっかりと覚えてしまいましょう。

最初に、企業分析の流れを図で示すと以下のようになります。

図 財務比率分析の基本的な流れ

企業の目的は、日々の事業活動によって売上高や利益を成長させ、それを通してのれんの創出力を大きくすることです。つまり、企業価値=のれんの創出力と言う事が出来ます。そして、のれんの創出力を表す指標が、PBRです。

ここで、のれんとは、企業がM&Aなどによって企業を買収した際に、取得した金額とその企業が保有する資産の純額を比較し、その超過分を無形固定資産として計上する勘定科目のことです。

例えば、A社が、資産の純額が1000万円のB社を1500万円で買収した場合、買収されたB社は1000万円しか持っていないにもかかわらず、それ以上の価値があると判断されて1500万円で買い取られたわけですから、差額の500万円は財務諸表には載らないB社の超過価値と言う事ができます。そして、その価値を金額として表現したものがのれんです。

企業の目的は、この財務諸表に載らない超過価値を絶えず生み出し、大きく育てることだと言うわけです。なぜPBRがのれんの創出力と言えるのかは後程述べます。

のれんの創出力であるPBRは、以下のように定式化できます。

そして、PBRの構成要素であるROEは以下のように分解できます(デュポン式)。

つまり、のれんの創出力であるPBRは収益性、効率性、安全性、成長性の4つの積で表現できると言えます。そして、各構成要素を詳細に分析するために様々な財務指標があります。

ここで、ROEの分解式である収益性×効率性×安全性には成長性が含まれません。そのため、それを補うために、PERが成長性を表す財務指標であるものと位置付けています。

財務分析とは結局のところ、企業ののれん創出力を上記の4つに分解し、それぞれについて分析を行い、総合的な視点から企業の本当の力を確認する行為であると言えます。

ここで、当期純利益が毎年のようにマイナス、つまり赤字となっている企業は、ROEがマイナスになるため、分析を深めることが出来ません。しかし、私たちが探している有望企業は、毎年継続して利益を出し、しかもそれが安定して成長している企業であるため、ここでは問題としません。

以下、財務分析の超重要公式であるPBR = ROE×PERの各構成要素について、順に説明していきます。

2.企業の目的は「のれん」の創出

くどいようですが、企業の究極の目的はのれんの創出です。そして、のれんの創出力を表している財務指標がPBRになります。

企業活動で必要になるのは、大きく分けてヒト、モノ、カネ、ノウハウやブランドの4つですが、そのうち貸借対照表に現れるのは、モノとカネのみです。しかし、貸借対照表に現れるモノやカネは、それだけでは価値を生むことはなく、誰が持っていても価値は変わりません。

モノやカネを有効に活用し、さらなるカネと価値を創出することが企業の最大の目的であり、全てです。

つまり、企業の価値は、モノやカネそれ自体ではなく、それらを有効活用できるヒトによって生み出されるのであり、それを毎年毎年繰り返し、長い事業活動を通して培ったノウハウやブランド、あるいは信頼から創出されるものです。

そしてこれは、株主をはじめとしたステークホルダーの有する価値を大きくし続けることに他なりません。言い換えれば、企業は、株主などの資金提供者、あるいは銀行などの債権者が期待する超過価値(収益率)を上回る価値(利益)を生み続ける事が義務づけられているわけです。

のれん、つまり超過価値を創出している企業と、価値を棄損している企業のイメージをそれぞれ下図に示します。

図 のれんの創出イメージ

図 のれんの毀損イメージ

私たちが探している企業は、当然ながら、のれんを創出し続けられる企業であり、上の図のうち、上側に示す企業となります。そして、そのような企業を財務的な観点から探し出すのが、株主としての立場から見たときの財務分析の意義となります。

3.のれんの創出力を現すPBR ~企業の本当の力を見る指標~

一般に、PBRは株価の割安判定に用いられ、1.0倍以下であれば割安、3.0倍や4.0倍以上であれば割高と判断されます。しかし、企業の目的をのれんの創出と定義すれば、PBRが1.0倍以下と言う事は、その企業はこれまでの事業活動の結果、純資産の価値以下の価値しかない、つまり、ステークホルダーが要求している超過価値を生み出せていないと市場が評価していると言う事になります。厳しい言い方をすれば、その企業は市場からの撤退を要求されていると言っても過言ではありません。

もちろん、市場がその企業の価値を不当に低く評価しているという可能性もあります。その場合は、絶好の買い時と言えるでしょう。

ですが通常、市場は効率的であると考えられるため、優良企業を不当に低く評価していることは滅多にありません。

勘定科目としてののれんは、先に述べたとおり、他社を買収した際などに、取得した金額とその企業が保有する資産の純額を比較し、その超過分を無形固定資産として計上しますが、企業が自社の努力によって築き上げたブランド力、販売力、優秀な人材などは、のれんとして財務諸表に記載されることはありません。

つまり、財務諸表に記載されているのれんの大きさが重要なのではなく、財務諸表には表れない、企業の本当の実力としてののれんの大きさを見極めることが重要であると言う事になります。

そして、そののれんを評価する上で使える唯一の財務指標がPBRであり、それをROEとPERに分解することで、その企業の収益力、効率性、安全性、成長性と言う4つの要素に細分化でき、さまざまな財務指標を用いて無形の価値を間接的に数値化することによりその企業の本当の力を分析することが出来ます。

PBRは、株の割安度を判断する指標としては有効ですが、単体で見てもあまり意味はありません。PBRが1.0倍を下回っている場合、その企業は割安なのではなく、単にのれんの創出力に乏しい、投資先としては有望とは言えない企業であるかもしれません。逆に、PBRが高い数値を示していても、その企業ののれん創出力が高く、高い収益力を十分に備えているのであれば、投資先として有望と言えます。

大切なのは、数値の関係性を数式化し、なぜPBRが高いのか、あるいは低いのかと言う事を分解して確認することです。

この章の最後に、個人的に理想的と考えているPBRの構成を示します。

上の図のように、収益性、効率性は高い値を保ちつつ、資産は全体的に圧縮してスマート化を目指しています。しかしながら、自己資本は利益の留保により着実に増えているため、財務レバレッジは低い値を保ちます。そして、収益性と効率性は高いため、結果としてROEは高い値を維持している、そんな企業です。また、売上高、純利益は安定的に成長を続けており、株価は、全体的な不景気や市場の短期思考によって一時的に大幅に下落している。その結果として、PBRやPERは低めの値を示している…個人的には、この状態が理想だと考えています。

このように、PBRやPERが示す値の理由を、数式から考える習慣をつけることが大切です。

4.ROE = 収益性×効率性×安全性 ~デュポン式によるROEの分解~

4-1.ROEの分解

先にも示しましたが、ROEはデュポン式を使って以下のように分解できます。


これは、1920年ごろにアメリカの化学会社デュポン社で考案された財務管理システムで、ROEを3つの財務比率に分解して自社の経営状況を分析することに活用されました。

デュポン式のメリットは、ROEを要素の掛け算の形に分解することにより、経営管理指標としてバラバラである各要素を関連付けることができ、ROEがなぜ高いのか、あるいは低いのかの原因を分析することが出来る点です。そして同時に、その企業のKPI(Key Performance Index:重要業績評価指標)をより具体的に意識できます。

デュポン式を使う上での注意点は、分解式の各要素は独立しておらず、相互に関連しているという点です。デュポン式の分解式では、それぞれの要素がお互いに打ち消し合う形で連動しています。

例えば、総資産回転率を上げるために売上高を大きくすれば、効率性は高くなりますが、それが利益に結び付いていなければ収益性は低下してしまいます。このように、1つの財務指標だけを見ていると、あちらを立てればこちらが立たずという状態に陥ってしまいます。

つまり、企業の経営トップは、デュポン式の各要素を個別に考えるのではなく、総合的な視点から経営戦略を立案し、上記の分解式の最適なバランスを保つことが求められます。そして、投資家としてこの式を使って分析をするのは、そのような最適なバランスをきちんと意識し、十分な成績を収めている企業を見つけるためです。

先にも示しましたが、私が理想としているのは以下のようなバランスを安定して保っている企業です。

後述するとおり、その企業がコスト・リーダーシップ戦略を採用しているのか差異化戦略を採用しているのかによって、収益性が高い傾向(効率性は低い傾向)にあるのか、あるいは効率性が高い傾向(収益性は低い傾向)にあるのかは異なります。

この分解式で分かるのは、あくまでもROEを切り口として見た場合の企業の大まかな財務体質です。

そして、上記式の各要素である収益性、効率性、安全性を分析するための代表的な財務比率をまとめると、以下の表のようになります。

表 収益性、効率性、安全性を分析するための代表的な財務比率

ここでは各指標の解説は省略しますが、詳細については財務分析(分析指標 -基本編-)にまとめていますので、確認してみて下さい。

4-2.企業の戦略(コスト・リーダーシップ or 差異化)が各指標の数値に現れる

企業は、各社が掲げるビジョンを達成するために具体的な戦略を立案し、それを実行に移すことで目標を達成し、価値を生みます。

企業の取りうる戦略は、下図に示すとおり、大きく分けて3つあります。これは、企業の競争戦略に関する有名な理論で、マイケル・E・ポーター教授が提唱したフレームワークです。

図 ポーターの3つの基本戦略

(出典:企業分析シナリオ[第2版] 東洋経済新報社、2006.10 著者:西村茂(一部編集))

この3つの戦略は、コスト競争力を重視する戦略(コスト・リーダーシップ)と、他社との違いを強調する戦略(差異化)、そして、それを実行する範囲を広くとるか狭くとるかという戦略(コスト集中or差異化集中)となります。

つまり、企業は大きく分けてコスト・リーダーシップ戦略を採用するか、差異化戦略を採用するかのどちらかになります。

そして、どちらの戦略を採用するかによって、先に述べたROEの分解式における各要素の数値、つまり収益性と効率性に違いが出来てきます。

例えば、コスト・リーダーシップ戦略を採用している企業であれば、できる限り効率化を図ってコストダウンを目指すため、ROEの分解式のうち、効率性の数値が向上します。また、一般的にコスト・リーダーシップ戦略を採用している企業は薄利多売のスタイルによって安い製品を大量に売ることで利益を上げるため、ブランドや独自の製品を市場に投入して差異化戦略を採用している企業に比べ、収益性、つまり利益率は低くなる傾向にあります。

5.将来への期待を現すPER ~成長性の分析~

5-1.PERには将来の期待が反映されている

企業を分析する上で、成長性を見極める事は最重要です。当然ながら、今後株価が上昇することを期待して株を購入するため、過去から現在に至るまで順調に成長してきた企業でも、それが今後も続かなければ意味がありません。

下手をすれば、今が企業の絶頂で、今後成長が鈍化、あるいは衰退するかもしれません。そうなった場合、今株を買ってしまうと、最高値で株を買ってしまった…なんてことにもなりかねません。成長性を詳細に確認するためには、ここで述べる定量分析である財務分析に加え、定性的な側面から企業を深く分析する必要があります。定性分析の方法についてはこちらでまとめていますので、参考にしてみて下さい。

さて、企業の成長性を表す指標として最も有名なのがPERです。

PERは一般に株価の割安判定に用いられる指標であり、PERが10倍程度以下であれば割安、30倍や40倍であれば割高となります。これは、現時点の企業の1株当たり純利益(EPS)と比較して、株価がその何倍であるかを確認することにより、株が高いか安いかを判断しようと言うものです。

例えば、1株当たり純利益がともに100円のA社、B社があったとします。そして、その2社の株価がそれぞれ1,000円と4,000円であったとします。この場合、A社、B社のPERはそれぞれ10倍、40倍であり、これだけを見ればA社の株が圧倒的に安いと言えます。

表 PERの比較

しかし、株価とは一般的に、将来の期待が反映されて成立しています。つまり、将来利益がもっと大きくなると期待されている企業の場合、その将来への期待が、現在の高い株価という形で表れていると考えることが出来ます。言い換えれば、PERが低い企業は、将来の成長があまり期待できない、期待されていない可能性があります。

表 PERによる株価の割安度判定イメージ

PERが低くても、実はその企業は成長期から成熟期に移行したところで、利益額が過去最高を記録しており、これから徐々に衰退していくと市場が判断しているのかもしれません。逆に、PERが高い数値を示していても、その企業は今後さらなる成長が期待できると市場が判断している可能性が高いと言えます。その場合、投資先としては有望と言えます。

PERの詳細な解説をすると長くなるため、ここでは省略します。PER自体の分析方法は財務分析(分析指標 -応用編-)にまとめていますので、確認してみて下さい。

ここでは、PER自体の分析方法ではなく、将来の成長が期待される企業のPERは高くなる傾向がある、と言う事を理解して下さい。

PERが高いと言う事は、割高である可能性もありますが、同時に、将来の成長をかなり期待されている企業でもあると言えます。そして、単に割高なのか、それとも成長性が高い企業なのかを確認するために、売上高や各種利益の成長率を使って分析することになります。

ここでは各指標の解説は省略しますので、詳細については財務分析(分析指標 -基本編-)で確認してみて下さい。

5-2.成長性は、過去10年、5年、3年の3つ期間の成長率から判断する

成長性は重要ですが、将来の成長性を正確に予測することはできません。過去にどれだけ素晴らしい実績を出していても、それが今後も継続するかは誰にも分かりません。経済の状況にも左右されますし、その企業が属する業界の動向にも左右されます。そのため、経済や業界を分析する事は極めて重要と言えます。しかし、経済や業界の動向を正確に予測することは、1つの企業の将来を占う事以上に困難でしょう。その重要且つ困難な予測をするために、多くの専門家が日々戦っています。

業界の動向については、今後市場が大きくなるのか、あるいは縮小に向かうのかといった大まかな予測であれば、インターネットや書籍から多くの情報が得られます。しかし、経済の状況ばかりは、ごく一般的な個人投資家がどうこうできる話ではありません。専門家の意見に素直に従って投資の判断材料にするか、あるいは、経済の動向は思い切って無視してしまう以外にないでしょう。

では、どうすれば良いのでしょうか。1つの方法は、定性分析の実施です。企業を定性的な側面から分析し、その企業の強みや弱み、あるいは他社との違いなどを調べ、その企業が将来も継続して好成績を維持できるかを判断します。

例えば、財務分析によってさまざまな指標を算出し、企業の実力を総合的に確認したとします。そして、いずれの指標を見ても、その企業の実力は素晴らしいことが示されていたとします。しかし、財務指標はあくまでも企業活動の結果が数値に現れているのみであり、その結果をなぜ出せたのかという理由・原因までは分かりません。その理由・原因を深く追及することで、その企業の実力が本物なのか、あるいは、好景気などの外部要因に支えられて達成した一時的なものなのかと言ったことを確認します。そのための手段が、定性分析です。

定性分析の具体的な方法については、定性分析で詳しくまとめていますので、参考にしてみて下さい。

定量分析に位置付けられる財務分析の結果から企業の将来の成長性を占う方法としては、やはり企業の過去の業績から推測することが一番だと考えます。

過去の業績が将来も続くかは不明ですが、少なくとも、過去に十分な実績を残している企業の方が、そうでない企業に比べて有望だと考えられます。

有言実行でやるべき事をきちんとやっている人の方が、大口をたたく割には行動が伴わない人よりも、はるかに信用できるのと同じです。

これまでの実績から将来の成長性を確認するには、過去10年間の年平均成長率を確認することが望ましいです。もっと長い期間の成長率を確認できればそれに越したことはありませんが、多くの企業を分析する必要があることを考えると、現実的には10年程度が限界ですし、10年分の情報であれば、インターネットから入手することが出来ます。

そして、過去10年間の情報を、10年前~現在、5年前~現在、3年前~現在、の3つの期間に分けて、それぞれの期間における年平均成長率を確認しましょう。

10年前と現在では、企業を取り巻く環境が大きく異なるため、分析する期間を3つに分ける事で、その企業が時代の流れに合わせて柔軟に変化しているのか、時代に合った商品・サービスを提供し続けられているかを確認することが出来ます。また、近年になって成長が鈍化しているのか、あるいはより一層成長しているのか、といったことも確認することが出来ます。

例として、2007年~2016年におけるA社の平均ROE、売上高成長率、各種利益成長率、EPS成長率を、直近10年、5年、3年ごとにまとめたものを示します。なお、ここで示す成長率は年平均成長率であるため、数値が小さくなっていれば、その期間における成長率が鈍化していると考えることが出来ます。また、ここで示す例は、実際の上場企業の数値を使用しています。

表 成長性分析の例(1社の期間比較)

これによれば、A社は過去10年間一貫して高いROEを示しています。また、10年前と比較すると、売上高、各種利益、EPSどれをとっても大きく成長していることが分かります。

しかし、直近5年及び直近3年の成長率を見ると、直近10年間の成長率と比べて明らかに鈍化していることが分かります。営業利益に関しては、直近3年間ではマイナスに転じています。

もちろん、業績には波があるため、成長率は基準とした年度の業績がどうであったかに大きく影響を受けますが、これだけを見ると、成長の勢いは落ちてきているように見えます。そのため、この企業が将来も力強く成長するかどうかは、疑わしいと考えることが出来ます。

このように、1つの企業の過去の成長率を10年、5年、3年と分けて確認することで、大きな流れの中で成長しているのかを確認できると同時に、近年の勢いも同時に確認することが出来ます。

6.財務分析は「1つの企業の期間比較」と「競合企業との比較」の2つを行う

企業の成長性を占う方法として、過去の成長性を10年、5年、3年の3つの期間で確認することが有効であると述べました。これは「1つの企業の期間比較」にあたります。

そして、企業の成長性を占うもう一つの有効な方法が「競合企業との比較」になります。これは当然と言えば当然ですね。投資先を選定するにあたり、競合企業と比べて優秀であるかは極めて重要であり、確認しないことはまずないと思います。

ここでは、先ほど示したA社に、同じ業界に属するB社、C社の例を加え、先の例と同様に成長率をまとめたものを示します。なお、この例では直近10年のみの成長率を記載しており、直近5年、3年の成長率は省略しています。また、参考として各社の2016年度の売上高と純利益額を追記しています。

表 成長性分析の例(競合3社の比較)

これによれば、売上高の規模はA社が最も小さく、C社の半分以下となっています。しかし、過去10年間の各成長率を見ると、A社が圧倒的に優れていることが分かります。B社、C社は、売上高、利益ともに10年前からほとんど成長しておらず、本業の収益力を表す営業利益に至っては、マイナスになっています。また、過去10年間の平均ROEについても、A社が最も高い数値を示しています。

この例から分かることは、成長性という観点から考えた場合、競合企業と比較してA社は極めて優秀であると言えますが、この成長が今後も続くかと言われると、直近5年、3年の成長率を見る限り微妙なところである、という事です。

このように、ある企業の成長性を分析する場合、「1つの企業の過去から現在にかけての期間比較」と「競合企業との比較」の2つを行う事で、多角的な分析が可能になります。

おわりに

ここまで財務分析の流れを書いてきましたが、分析の流れをつかんでいただけたでしょうか。

分析の流れは何となく分かったけど、かなり大変だな…という印象を持たれた方が多いのではないでしょうか。これを全ての企業に対して行っていたら、いったいどれだけの時間がかかるのか、と。

確かに、企業を詳細に調べようと思うと、かなりの時間がかかります。ですが、ここで示した内容だけであれば、エクセル等でフォーマットさえ作成してしまえば、財務諸表の各数値を入力するだけで全ての指標が算出できます。1~2時間あれば全ての指標と各種成長率を算出することが出来ます。

財務諸表の数値は手入力となってしまうため面倒ですが、1~2時間程度で企業を詳細に分析できるのであれば、やって損はないはずです。

元本の安全性を守りつつ資産を増やすという、ある種不可能に近いことを達成するためには、ある程度の時間と労力を費やすことは必要だと考えています。

また、ここで示した財務分析は、企業分析の中の1つである定量分析に過ぎません。この他にも、企業を定性的な側面から分析する定性分析も必要になります。個人的には、定量分析よりも定性分析の重要性が高いと考えています。定性分析の方法についてはこちらで詳しくまとめていますので、参考にしてみて下さい。

企業分析は決して楽ではありませんが、定量と定性の両面から企業を詳細に分析して投資先を厳選できるようになれば、リスクを極力減らしつつ、大きく利益を出せるようになります。

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