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売買のタイミング

はじめに

株式投資の究極の目標は「買った時よりも高く売る」ことです。これさえできれば、株式投資において利益を出すことができ、損失を出すこともありません。ですが、これがなかなかできません。これを達成するために、世界中の多くの投資家が時間と労力を費やし、将来的に株価が上がると期待できる企業を探し続けているのです。

ここで仮に、今後長期的に株価が上がると期待できる企業を見つけ出したとします。では、この企業の株をいつ買うべきでしょうか。そして、いつ売るべきでしょうか。

当然ながら、できるだけ安く買い、できるだけ高く売る事が望ましいと言えますが、そもそも何を基準に「安い」、「高い」を判断するのでしょうか。そして、さまざまな要因によってランダムに変動する株価の値動きを捉え、安い価格で優良企業の株式を購入する事など、果たしてできるのでしょうか…。

このように、株式の売買における適切なタイミングを見極めるためには、多くの疑問を解消する必要があります。ここでは、こうした売買のタイミングをめぐるさまざまな問題に対して、1つ1つ説明していきたいと思います。

1.いつ買うべきか、そしていつ売るべきか

有望な企業を見つけ出したとして、その企業の株をいつ買うべきでしょうか。

もちろん、今後継続的に株価の上昇が期待できるのであれば、「今すぐに買う」という選択も正解でしょう。買うタイミングを逃してしまうと、その間にどんどん株価が上昇し、利益を取り損ねるかもしれないからです。

ですが、期待とは裏腹に、株価が下がり続ける可能性もあります。どれだけ時間と労力を費やして分析し、どれだけ自信のある根拠を見つけたとしても、それが既に株価に織り込まれている可能性だってあります。つまり、自分が見つけた情報を、市場は既に知っていたという状態です。そして、それが普通であると考えておいた方が良いでしょう。

情報社会の現代において、自分だけが知っている耳寄りな情報など、インサイダーでもない限り、滅多にありません。

さて、長々と書いてきましたが、では、結局いつ買えば良いのか、ということですが、それは「その企業の本質的価値に対して、株価が十分に割安と思われる時」です。

なぜなら、株価は短期的にはランダムな動きをしますが、長期的にはその企業の本質的価値に収束すると考えられるからです。つまり、売買のタイミングを教科書的に説明するならば、以下のようになります。

「企業の本質的価値に対して株価が十分割安な時に購入し、企業の本質的価値に対して株価が明らかに高い水準に達したら売る」

このことから、株式を売買するためには、企業の本質的価値はおおよそいくらなのか、という事を知る必要があります。極論を言えば、株を売買するための明確な尺度は、これ以外にありません。本質的価値とは、それほど重要な概念と言えます。

以下、企業の本質的価値の考え方について、その概要を述べます。

2.企業価値という考えに基づいて「安い」、「高い」を判断する

まず、企業価値という言葉を教科書的に定義すると、以下のようになります。

企業価値とは「その企業が将来にわたって生み出すキャッシュフローの現在価値」である。

ファイナンスの教科書などを読んだことのある人にはおなじみの定義ですが、これから学ぶ人にとってはよくわからないと思いますので、ここで簡単に説明します。

企業価値を評価する上で最も一般的な方法はディスカウントキャッシュフロー法(DCF:Discounted Cash Flow)と呼ばれるもので、ディスカウントは「割り引く」、キャッシュフローは「現金流量」という意味です。つまり、DCF法を日本語で書くと、「(将来生み出される)現金流量を(現在の価値に)割り引く方法」ということになります。DCF法は企業価値だけでなく、ありとあらゆる資産の価値を評価する方法として使用できます。

DCF法の考え方をざっくりと理解するためのポイントは①企業は永続することを前提とする②1年後の1万円は、現在の1万円よりも価値が低い、の2つです。

①企業は永続することを前提とする

生物には寿命がありますが、企業には寿命はありません。そのため、企業は将来にわたって永遠に事業活動を行い、キャッシュを生み出し続けるものと考えます。このような考え方をゴーイングコンサーン(継続企業の前提)と言ったりもします。実際には倒産する可能性もありますし、事業をやめてしまうこともありますが、企業価値を算定する上ではそこには触れず、あくまでも企業は永続することを前提とします。

②1年後の1万円は、現在の1万円よりも価値が低い

1年後の1万円と現在の1万円は、同じ価値ではありません。なぜなら、いま1万円をもらってそれを貯金すれば、1年後には利息がついて「1万円+利息」になるからです。貯金ではほとんど利息が付きませんが、仮に1万円を年率10%で運用できるとします。そうすると、1年後には1万円に10%の利息がついて1.1万円(=1万円×1.1)になります。

さらに、その1.1万円を翌年も年率10%で運用すると、1.1万円に10%の利息がつくため、1.21万円(=1.1万円×1.1)になります。これをひたすら繰り返せば、複利の効果で最初の1万円はどんどん膨れ上がり、例えば20年後には約6.7万円(=1万円×(1.1^20))になります。これを一般化すると、以下のようになります。

図 利回りと割引率の考え方

このように、キャッシュの価値は未来になればなるほど下がるため、遠い将来のキャッシュフローを現在の価値に割り引くと限りなくゼロに近づくことになります。上記のの考えを企業価値の算出に適用したのがDCF法になります。

さて、ここまでの説明から企業価値の算出方法がイメージできたと仮定して話を進めます。DCF法により企業価値を算定し、それを企業の発行済み株式総数で割れば、1株あたりの理論的な企業価値を算出することができます。それが理論株価です。つまり、企業価値という考えに基づいて株価の安い、高いを判断するということは、企業が将来にわたって生み出すキャッシュフローの現在価値、つまり理論株価と比較して、現在の株価は安いのか、それとも高いのかを判断するということです。

図 理論株価の算出と割安判定のイメージ

株価が安いのか高いのかを判断するための基準は、究極的にはこの方法しかありません。株価の割安度を判定する代表的な指標であるPERも、根っこの部分ではDCF法による企業価値評価と繋がっています。なお、この記事は株式売買のタイミングについての内容であるため、企業価値評価の具体的な方法やPERとの関係には触れません。これについては、今後別の記事で紹介したいと思います。

3.企業の本質的な価値を正確に算出することはできない

これまで、企業の価値を算出する事の重要性を説いてきましたが、ここで1つ大きな問題があります。それは、

「企業の本質的価値を正確に算出することはできない」

ということです。これまでの主張と矛盾するようですが、これは仕方がありません。どれだけ頭の良い人が、どれほど高度な技術を用いて計算しても、企業の正確な価値を算出することはできません。誰にも分らないのです。投資の神様であるウォーレン・バフェットと、そのパートナーであるチャーリー・マンガーも「二人の出す答えは異なる」と言っています。

つまり、企業の正確な価値を出そうと必死になっても、それにはあまり意味がないという事です。

では、どうすれば良いのか。それは「ある程度、ざっくり、このくらいかな?」というレベルで企業の価値を算出し、その値を基に判断するというものです。ざっくりとした値であれば、割と簡単に算出することができます。もちろん、アナリストなどのプロが算出する企業価値とは、費やす労力も正確さも天と地ほどの差があります。

ですが、そこは問題ありません。私たちが簡易的に算出する企業価値は本当の価値とは異なるでしょうが、上でも述べたとおり、企業の本質的価値は誰にも分からないので、安全側に価値を見積もるために、常にいくらか割り引けばよいのです。これにより、自分で出した答えと本当の答えの間にあるギャップを埋める事ができます。

このように、自分で簡易的に算出した企業価値と本質的価値の誤差を調整するという考え方が、次に述べる「安全域」という概念です。

4.安全域という概念について

先ほど、企業の正確な価値は誰にも算出できないが、ざっくりとした値であれば算出できると述べました。ここで気になるのは、「ざっくりと算出した値をもとに、投資判断を下して良いものか」という事です。

企業の本質的価値という考えは、株式投資をする上で最も重要な概念であるにもかかわらず、それが正確には算出できないとなると、不安になります。ましてや、簡易的にエイヤで算出した値だとなおさらです。

ですが、心配はいりません。簡易的に算出した企業価値は、概ね正確であれば問題なしです。

ここで大切になるのが、安全域という概念です。

安全域とは、バリュー投資の祖であるベンジャミン・グレアムが、彼の著書である「賢明なる投資家 割安株の見つけ方とバリュー投資を成功させる方法」の中で紹介している概念であり、ごく簡単に説明すると以下のようになります。

「企業の正確な価値は分からないので、ざっくりと企業の価値を見積もって、安全側に見て数十%程度安い値に設定しておこう」

極めて単純な考えですが、重要なことです。この安全域で設定する値には明確な基準は設けられていません。25%でも、40%でも、極めて保守的に50%としても良いでしょう。

ここで主張したいのは、計算間違いは必ず起こるのだから、間違いを無くすことに神経を集中するのではなく、間違うことを前提として、常に安全域を設けましょうということです。証券分析の生みの親とも言われる天才的な投資家であるベンジャミン・グレアムの頭脳をもってしても、企業の正確な価値は分からないのです。

このように安全域を設定しておけば、自分で算出した企業価値がざっくりとしていて不正確なものであっても、その分は安全域によって吸収されます。

図 安全域の概念

もし、あなたがかなり保守的に見積もって企業価値を算出したのであれば、安全域として設定するのは10%程度でも良いかもしれません。どの程度の安全域を設けるかは、その都度判断の分かれるところでしょう。

いずれにしても、自分の評価を100%信用するのではなく、常に保守的に考えることが大切です。ただし、あまり保守的に考えすぎるとすべての企業が割高ということになってしまい、投資対象にできる企業がなくなってしまいますので、そこは注意が必要です。

そもそもこの安全域と言う概念は、考案者であるベンジャミン・グレアムが、1929年の経済危機で一度破綻した経験から生み出されたものであり、元本の安全性を第一に考えて投資をするべきだと言う考えに基づいています。また、当時は経済が不安定であったこともあり、安全域を設定しても購入できる企業、つまりバーゲンセール価格で売りに出されている企業がたくさんあったそうです。

経済が成熟している今とは、企業を取り巻く環境や、株式市場そのものが全く異なっています。現在においては、割安に放置されている優良企業はほとんどありません。

もちろん、元本の安全性を第一に考える事は今でも大切ですが、この考えに固執しすぎると、適正株価を安く設定しすぎてしまい、投資対象が1つも見つからないという事にもなりかねません。

しかし、それでも、この安全域と言う考えは重要です。どの程度の数値を見込むかは各々の判断があって良いと考えますが、安全域を全く無視すると言うのはおすすめしません。自身で導き出した適正価格に対して「なぜその価格なのか」と言う事を自分自身で問い、納得できる理由があるのであれば、それで良いと考えます。

5.絶好の買い場が訪れる4つのケース

上で述べたとおり、素晴らしい企業の株式を割安な価格で購入できることは滅多にありません。そんな掘り出し物があれば、皆が欲しがるでしょうし、皆が欲しがれば、株価は上がってしまうからです。また、他の多くの投資家がまだ知らない耳寄りな情報を手に入れることも、現実的には不可能でしょう。

そのように考えると、結局、優良企業の株式を割安な価格で購入することなど不可能ではないかと考えてしまいそうです。

ですが、優良企業の株式を割安で購入できるチャンスはあります。そのチャンスは滅多に訪れることはありませんが、もしそのチャンスに乗じて株式を購入することができれば、時間とともに株価は大きく上昇し、あなたの資産は膨れ上がることでしょう。

では、株価が割安になる時とは、どのような時でしょうか。

優良企業の株が割安になる時とは、大きく分けて以下の4つのケースです。

CASE1:相場全体の調整や暴落

CASE2:全般的な景気の後退局面

CASE3:個別企業が一時的な業績低迷に見舞われている時

CASE4:企業の業績は伸びているが、それが市場コンセンサスに届かなかった時

以下、順に見ていきましょう。

CASE1:相場全体の調整や暴落

相場がある一定期間上昇を続けた後や長期休暇に入るタイミングなどにおいて、利益確定によって調整に入るようなケースです。このような時は、多くの投資家が利益を確定するため、株が大量に売られます。そして、その結果、相場全体の調整という形で株価は下落します。

CASE2:全般的な景気の後退局面

不景気や地政学的なリスクの高まりなどによって不安感が募り、世界規模で、株式市場からより安全な資産に資金が移る場合などです。これも、CASE1と同様に株が大量に売られるため、株価は全体的に暴落します。

CASE1と違う点としては、不景気や地政学的リスクが株価下落の原因であるため、その不安が払しょくされない限りは株価が下がり続けるという点です。つまり、長期化する可能性があるという事です。

参考:CASE1とCASE2の特徴と損失を回避する方法の1例

CASE1とCASE2の特徴は①いつやってくるか分からない②いつまで続くか分からない、の2点でしょう。これらのケースでは、株価が大幅に下落する上に、長期化する傾向があるため、これをもろに受ければ、投資資金の小さい個人投資家にとっては死活問題です。

この直撃を回避する方法の1つは、例えば、少なくとも資金の50%以上は常に現金化しておき、いざという時、つまり株価が大暴落した時に、その現金で株を追加購入し、平均取得金額を大幅に下げると言うものです。正直なところ、これ以上に良い方法を思いつきません。

もし、大暴落が起こったタイミングで株をほとんど、あるいは全く保有していなかったとすれば、これは大チャンスの到来です。

有望企業の株をバーゲン価格で大量に購入できます。こういう時に勇気を出して株を購入できるかどうかは、常日頃から企業を詳細に分析しているかどうかにかかっています。

このようなチャンスをうまく活用できるかどうかは運に委ねるより他に方法がなさそうですが、このタイミングにうまく乗ることができれば、資産を大きく増やすことができるでしょう。

CASE3:個別企業が一時的な業績低迷に見舞われている時

優良企業の業績が低迷した時、あなたはまず「なぜその企業の業績は低下したのか。それは一時的なものか」を決算短信等から確認します。そして、それが一時的な要因によるものだと判断できれば、近い将来それを取り戻す可能性が高いと考えられるため、株価が大きく下落したタイミングで、思い切って購入しましょう。そうしてあとはずっと持っておけば、株価は次第に上昇していきます。

例えば、ある優良企業が決算を発表したとします。その企業は、これまで増収増益を続けており、今期も増収増益が期待されていました。ところが、今期は市場の期待とは裏腹に業績が下がってしまいました。当然、その翌日に株価は暴落します。

そこで、その企業の業績が低下した理由を決算短信から確認してみると、新規店舗を多数オープンしたことで販売管理費が上昇し、利益が一時的に低下したという事が分かりました。

そこであなたはこう考えます。「新規店舗の多数出店に伴うコスト増が業績低迷の理由であれば、来期以降はその新店舗が売り上げ増加に貢献するはずなので、今期の低迷は一時的なものだ。よって、市場の短期指向によって株価が大幅に下落した今が購入のチャンスだ」

図 一時的な業績低迷時の株価の変動イメージ

実際、このような要因で一時的に業績が低迷した企業の株価は、決算が発表された直後は下落しますが、比較的早い段階で株価は再び上昇し始めます。

もちろん、このような場合でも、よく知らない企業の株は購入してはいけません。あくまでも、きちんと分析をして、株価が下落するタイミングを今か今かと待っているケースでの話です。

こうしたチャンスをうまく活用すれば、大きなリスクを取ることなく、利益を上げられる事が多いです。

CASE4:企業の業績は伸びているが、それが市場コンセンサスに届かなかった時

最後のケースは、業績は良好ながら、市場の期待にそぐわなかった場合です。

CASE3と違う点は、CASE3が前年度、あるいは前期と比較して業績が落ちているのに対して、CASE4は業績は伸びているが、市場の期待までは届かなかったという点です。

個人的には、CASE4で投資をする事をおすすめします。なぜなら、CASE3では、業績の低迷が本当に一時的なものであるかを見極めるのが難しいからです。もちろん、それを見極めるために企業分析をするわけですが、判断を誤る事もあります。

その点、CASE4は、業績は伸びているわけですから、それで株価が下落するのはむしろラッキーと言えるでしょう。

図 市場コンセンサスに届かなかった時の株価の変動イメージ

市場コンセンサスとは、アナリストやその他市場関係者が、1つの企業に対して利益や配当の金額を予測し、その平均値をとったものです。つまり、市場全体が「この企業の業績はこれくらいだろう」と合意した値の事です。

市場コンセンサスは多くの場合、企業が独自に行っている業績予想よりも高い場合が多く、成長著しい企業であればなおさらです。

そして、企業が発表した業績が市場コンセンサスを下回ると、たとえ業績は伸びていたとしても、株価は下落します。

ここがチャンスです。なぜなら、業績自体は伸びているため企業の健全性には何ら問題がないにもかかわらず、株価は市場の短期指向によって一時的に下がり、ある種のお買得価格で売りに出されるからです。また、企業は業績を伸ばしているわけですから、ある程度期間が経てば、当然ながら株価は再び上昇を始める事が多いです。

これを狙う機会はかなりあります。四半期に一度企業が決算短信を出しますので、そのたびに(つまり、1企業につき1年間に4回)チャンスが来ます。それも、企業によって決算の日程は異なるため、複数の企業を対象とすれば、チャンスはもっと増えます。あるいは、月次報告を出している企業であれば、月に一度の頻度でチャンスが訪れます。これは、CASE3も同様ですね。

市場コンセンサスとは、上でも述べたとおり、アナリストが業績予想をして形成される期待であるため、結局のところ、ほとんどの投資家にとっては自分以外のプロの分析に基づいて成り立っている期待です。そして、企業が少しでも期待にそぐわない業績を出すと、それに乗っかった多くの投資家が、みんな「だまされた」と言って株を叩き売るのです。

ここで、自分自身できちんと企業を分析して待ち構えていたあなたは、他の投資家が株を売り切ったタイミングを見計らって、待ってましたと言わんばかりに株を購入しましょう。そうすれば、あとは少しの間待っておけば利益は出るでしょう。

なお、余談になりますが、企業が市場の期待どおりの業績を出しても、株価は上がりません。それは、市場コンセンサスが既に株価に織り込まれているためです。つまり、期待どおりの業績を出しても株価は上がらないのに、期待を少しでも下回ると株価は暴落するのです。これでは、常に投資家に監視されている経営者も大変ですね…。

6.CASE3とCASE4の株価の変動例

さて、最後に、CASE3CASE4のそれぞれについて、実際の株価がどのように動くかの1例を示します。ここで示す2つの例は、どちらも「寿スピリッツ」という企業のものです。

この企業は、全国各地で販売されるお土産やギフトもののお菓子を製造・販売している企業であり、百貨店などの商業施設の他、空港や駅、高速道路のSAやPAなどでも商品を販売しています。業績は安定的に伸びており、株価も長期で見ると右肩上がりです。

ですが、時には業績の低下も起こります。あるいは高い期待に応える事ができないこともあります。ここでは、そういった場合にこの企業の株価がどのように動き、その後どのようになっていったのかを見てみます。

CASE3:個別企業が一時的な業績低迷に見舞われている時の株価の変動例

順調に業績を伸ばしていても、時には業績の低迷も起こります。以下に示すチャートは、寿スピリッツの2015年12月から2017年11月初頭までの株価の推移を示しています。

図 一時的な業績低迷に見舞われている時の株価の変動例

(出典:YAHOO!ファイナンス(一部編集))

上のチャートを見ると、2016年8月から株価が大幅に下落していることが分かります。これは、2016年度の第一四半期における業績が、前年同期比でマイナスになったことに起因します。決算短信が発表されてから約1ヵ月間で、株価は約36.4%下落しました。

しかし、決算短信を確認してみると、じつは売上高、営業利益、経常利益、税引前当期純利益はすべて前年同期比でプラスになっています。ですが、法人税等の調整額が大きく、税引後当期純利益では減額となってしまっており、一株当たり純利益(EPS)も低下しています。

この例は、これまで順調に業績を伸ばしてきた企業が一時的な業績低迷に見舞われたことで株価が大幅に下落した一例です。ちなみに、その後この企業は業績を回復させ、株価が順調に回復しているのは上のチャートに示すとおりです。

CASE4:企業の業績は伸びているが、市場コンセンサスに届かなかった時の株価の変動例

先ほどの例は、業績が一時的に低下したケースですが、ここで示すのは、業績は伸びているのに株価が下落したケースです。以下に示すチャートは、寿スピリッツの2016年11月から2017年11月初頭までの株価の推移を示しています。

図 業績は伸びているが市場コンセンサスに届かなかった時の株価の変動例

(出典:YAHOO!ファイナンス(一部編集))

上のチャートを見ると、2017年8月に株価が大幅に下落していることが分かります。これは、2017年度の第一四半期における業績が、市場コンセンサスに届かなかったことに起因します。決算短信が発表されてから4日間で、株価は約14.7%下落しました。

決算短信を確認する限り、2017年度の第一四半期の業績は極めて順調で、税引後当期純利益は前年同期比でなんと196.5%のプラスとなっています。一株当たり純利益(EPS)も増加しています。それでも、この結果に市場が満足しなかったことで、株価は一時的に下落しました。

とは言っても業績は伸びているため、CASE3の例ほどは下落せず、回復もかなり早いことが分かります。このように、市場のごく一時的な気まぐれで株価は大きく下落することがあるため、このタイミングでうまく株を買うことができれば、大きなリスクを取ることなく利益を出すことができます。

もちろん、どのタイミングで売るかによって得られる利益の大きさはかなり異なります。すぐに利益を確定しても良いですし、じっくり待って大きな利益を狙うのも良いでしょう。いずれにしても、有望な企業を自分で探してチェックしておけば、市場の短期指向によって株価が大きく下がったタイミングで株を安く購入できるという事を覚えておきましょう。

おわりに

かなり長くなってしまいましたが、株式を売買する適切なタイミングや考え方について理解して頂けたでしょうか。

実際のところ、ここで書いていることを常に意識して冷静に株式投資をすることはなかなか難しいと思います。有望な企業を見つけると、どうしても、すぐに買わないともったいないという衝動に駆られるからです。

ですが、株式投資における利益額(利回り)を決定する上で重要なことは、高く売ることよりも安く買うことです。そして、そのための唯一の判断基準は、企業の本質的価値という考え方に他なりません。

この値は、概略であれば本当に簡単に算出できますので、衝動に駆られて株を購入する前に概略の理論株価を算出し、その値と実際の株価を比べてみて下さい。実際の株価が理論株価に対してかなり割高になっているケースが多々あります。優良企業であればなおさらです。

PERやPBRで割高・割安を判断する方法もありますが、それと合わせて、企業の本質的価値から判断するという事も忘れないでください。

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