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基本的な考え方と心構え

はじめに

株式投資をする上で最も大切なのは負けない事です。ここで言う「負けない」とは、全ての取引で利益を出すという意味ではありません。長期的に見て「大きな損失を出さず、小さな損失で抑えること。そして、その損失を補って余りある利益を出すこと」を意味します。

ここでは、この目標を達成するために必要となる、株式投資に対する基本的な考え方と心構えについて、私の考えを書いていきます。

1.投機ではなく投資をする

まずは「投資」という行為を明確に定義しておきたいと思います。

投資とは、詳細な分析に基づいたものであり、元本の安全性を守りつつ、かつ適正な収益を得るような行動を指す。そしてこの条件を満たさない売買を、投機的行動であるという。

(賢明なる投資家 割安株の見つけ方とバリュー投資を成功させる方法 より引用)

ここで重要なのは「元本の安全性を守りつつ…」という点です。

普通に考えれば、損失を出さずに適正な収益を出し続けることは不可能であるため、この定義を満たす行為としての「投資」を行う事は容易ではありません。

ですが、それを可能にする方法が一つだけあります。それは、詳細な分析に基づいて投資をするという事です。そして、この定義に常に立ち返ることで、目先の利益よりも、損失を最小限に抑える事を優先するという最も大切なルールを思い出すことができます。

自分の能力の範囲内で達成できる利益を長期的に出し続ける事で、損失を補って余りある利益を得ることを目標とします。

一般に、株式投資はギャンブルである、もしくは楽をして儲ける手段である、といった誤った認識が広がっています。この原因はさまざまですが、一つ挙げるとすれば、それは投資の定義が明確でなく、投資と投機が混同されていることでしょう。そして、多くの場合、テレビや雑誌で大々的に取り上げられるのは、デイトレードに代表される投機によって短期間で莫大な利益を得たようなケースです。

もちろん、短期間で莫大な利益を得られるのであれば喜んで投機をしたいところですが、実際、そんなにうまくはいきません。大きく稼げるという事は、大きく損失を出す可能性のある勝負をしているという事であり、それは結局のところ、ギャンブルに近い性質を帯びた行為となります。

自分の大切な資金をギャンブルに投じる余裕はありません。私たちが目指すべきは、元本の安全性を守りつつ、確実に利益を出し続けることです。

そしてそのためには、時間と労力を費やして、企業を詳細に分析する必要があります。一つの企業について、収益性、効率性、安全性、成長性、競合企業に対する優位性、業界の動向…その他、企業に関するあらゆる情報を調べます。

そうした努力に基づいた投資行動を続けることで初めて、元本の安全性を守りつつ、適正な利益が得られるのだと思います。

2.空売りをはじめとした信用取引はしない

信用取引は絶対にしません。リスクが大きいからです。

信用取引には①下落相場であっても利益を出すことができる②リスクヘッジの方法として活用できる③レバレッジをきかせる事で自身の投資資金の数倍程度の金額まで取引ができる、といったメリットがあります。

そのため、空売りをはじめとした信用取引は、自身の投資哲学に基づいてうまく活用すれば、利益を最大化できます。

ですが、それがなかなかできません。なぜなら、利益を大きくできる可能性があるという事は、それだけ誘惑も大きくなるという事であり、多くの場合、その誘惑に勝つことができず、投機的な行動に走ってしまうからです。

また、現物取引の損失額は、最大でも自身の投資資金を全て失うだけで済みますが、信用取引の場合、その性質上、損失額は青天井であり、レバレッジをきかせた取引を行っていると、当然ながら自身の投資資金の数倍以上の損失が出る可能性もあります。

企業も個人も、レバレッジに頼りすぎるといつか痛い目に合います。株式投資において最も重要かつ困難なことは、自分の感情をコントロールし、投資哲学を貫くことです。

利益を出すことよりも損失を出さないことを優先するという投資哲学を遵守するためにも、儲けはデカいが損失もデカい取引には手を出しません。

3.日々の株価の動きや経済動向は気にしない

企業価値に着目して投資することを原則としているため、日々の株価の動きや、経済動向はあまり気にしないようにしています。

株価は、短期的にはさまざま要因で変動するため、気にし始めたらキリがありません。ましてや、日々の経済動向など、予測したり利用したりすることは不可能であるため、それを気にしていても仕方がないと考えています。

例えば、あなたが寝ている間に、米国の要人が経済政策に関する何らかの重大な発言をしたとします。そして、翌朝その事実を知ったとして、それをどうやって取引に生かすのでしょうか。そのようなことが、果たして可能でしょうか。

世界各地の情報をいち早く入手でき、大量の取引を瞬時に行える機関投資家であれば話は別かもしれませんが、一般的な個人の投資家が、世界経済を相手に株式投資で優位に立てるとは到底思えません。

それよりは、経済動向によって株価が大暴落したら、株を買い増しするチャンスだぞ、くらいに構えていられるように、投資先の企業の分析をきっちりと行い、明確な根拠を持って株を購入しておくことの方が、よほど重要ではないでしょうか。

こうしたスタンスでいる事のメリットの一つは、9:00~15:00という決して短くはない時間を、自由に使える事です。企業の分析をしても良いですし、全く違う事をしても良いでしょう。会社員の方であれば、仕事に集中できるでしょう。

ただ、やはり気になるものは気になるため、時々ちらっと見ます。そして、自分が保有している株が大幅に下落していたりすれば、その原因を確認したうえで、問題なければ買い増しを行います。

それ以外で何かをするという事は滅多にありませんので、基本的には、不安に駆られる日々を過ごすことはありません(もちろん、定期的に投資先の企業の業績や動向を確認する必要はあります)。

日々の株価も経済の動向も予測はできないし、それを利用して利益を出すことも私にはできません。どちらもできないので、やりません。

こんな風に考える方が、シンプルで良いと考えています。

4.自分が理解できることだけをする

上でも書きましたが、自分が出来ないこと、分からないことはしてはいけません。

私は経済動向の予測もできないし、株価の動きを予測することもできません。テクニカル分析もできなければ、FXや不動産など、株式投資以外のあらゆる投資ができません。投資にはいろいろな種類がありますが、その全てに専門家がいるくらい複雑で難解であるのに、自分が複数の投資に手を出すことは、能力的にも時間的にも不可能だと考えています。

国内株式の現物取引だけで精いっぱいです。なので、それ以外には手を出しません。

ですが、できない事は多いほうが良いと考えています。なぜなら、できない事が多いという事は、できる事が少ないという事であり、その結果必然的にやるべき事が限定され、明確になるからです。そして、それで十分に利益を出すことができます。

大切なのは、自分にできる事には限界があると認識した上で、できる事だけに時間と労力の全てを集中することです。

また、株式投資に限らず、あらゆる投資において上達するためには、下の図に示すように「すべき事」の中で「できる事」の割合を増やしていくことが必要です。

図 上達のイメージ

上の図の各象限に何が入るのかは人それぞれですが、自分の能力・考えに基づいて「すべき事」、「しなくて良い事」、「できる事」、「できない事」を明確にしましょう。

5.全て自分で決める

基本的に、投資に関する判断は全て自分で行う事を強くおすすめします。理由は大きく分けて3つあります。

①誰かのアドバイスに従って投資をする場合、その情報は既に株価に織り込み済みである可能性が高い

例えば、有名なアナリストが推奨しているという情報を基に投資をする、あるいは雑誌に掲載されている推奨銘柄を選んで投資をするといったケースを考えてみます。

この場合、それはあなた以外の人からもたらされた情報であるため、当然ながら、他の多くの投資家も共有している情報という事になります。そのため、仮にその情報が正しかったとしても、それは既に現在の株価に織り込まれている可能性が高いのです。

したがって、例えばA社の業績が劇的に向上する可能性が高いことを理由に「買い推奨」と書かれている銘柄があったとしても、それは既に株価に織り込み済みである(つまり、業績が劇的に向上することを前提として現在の株価が形成されている)ため、その織り込み済みの価格で株を買ったとしても、株価が買い値よりも上昇する可能性は低いという事です。株は、将来の期待を反映して現在の価格が形成されるからです。

逆に、A社の業績が、多くの投資家が期待していたものよりも低かった場合、株価は暴落する恐れがあります。企業が市場の期待を上回る業績を達成しない限り株価の上昇は期待できず、市場の期待に達しなかった場合、たとえ業績が向上していたとしても、株価は下がることになります。

要するに、誰かのアドバイスに従って株を購入した場合、利益を出せるよりも損失を出してしまう可能性の方が高いという事です。

株式投資で利益を出すためには、誰も知らない情報、誰も気づいていない情報を自分でいち早く見つけ出し、他の投資家が気づく前に株を購入する必要があります。そして、そのためには、自分自身で企業を分析する以外に方法はありません。

②投資の定義である「投資とは、詳細な分析に基づいたものであり…」という部分に反する

誰かのアドバイスに従って投資をするという事は、結局のところ、自分で詳細に分析をしていないという事です。その時点で、それは投資ではなく投機に近い行為になってしまいます。

もちろん、誰かから耳よりの情報を入手した後に、その企業を徹底的に調べ、自分が納得した上でその企業の株を購入するのであれば全く問題ありません。その場合は、純粋にその情報を提供してくれた人に感謝すれば良いでしょう。

いつでもどこでも、自分で調べ、自分で判断し、自分で購入することが大切です。それが難しい場合は、いっそのこと資産運用は全てプロに任せる方がリスクは小さいでしょう。

③専門家にも、いろいろと事情がある

いわゆるオイシイ話と言うのは、そんなに簡単に得られるものではありません。

仮に、あなたが苦労して見つけた最高の情報があったとして、それを他人に教えてあげるでしょうか。自分の投資アイデアをネット上で公開する事はあっても、もし本当にすごい発見をしたのであれば、あなたは誰にも気づかれないよう、こっそりと株を買うはずです。そして、株を買いきるまでは、その情報は公開しないでしょう。

それは、プロであるアナリストやファンドマネジャーも同じです。むしろ、プロの人たちほど、情報を公開するわけにはいきません。なぜなら、プロの人たちはお客様のお金を預かって資金を運用しており、その運用利益の中から手数料と言う形で給料をもらっているからです。

プロは利益を出すことが義務であり、厳しいノルマを達成するために毎日死に物狂いで調査をしています。そのような人たちが、やっと見つけた金の卵を、雑誌やネットで簡単に公開するでしょうか。しないはずです。

要するに、雑誌やネットに出ている情報と言うのは、その情報元が出しても構わない、あるいは情報を出すことで利益が得られると判断した情報のみという事です。

あるいは、株価が下落しそうな企業があったとして、それを回避するためにあえて推奨銘柄として雑誌で掲載するというようなことも稀にあります。つまり、本当は買いとは言い難い銘柄に対して買い推奨をすることで、世間の投資家に株を買ってもらい、株価の下落を回避するというわけです。

結局のところ、専門家には専門家の事情があるという事です。全ての情報が信用できないわけではありませんが、何かを参考にする場合、必ず自分でも確認する事を心がけましょう。

6.何事も柔軟に

さて、いろいろと書いてきましたが、最後に伝えておきたい事があります。

それは、自分の方法論にこだわり過ぎない方が良いという事です。今までの内容と矛盾すると思われるかもしれませんが、これは非常に大切な事だと考えています。あなたの中で核となる部分、投資哲学以外については、細かい方法論に固執しないことをおすすめします。

それは、自分に合った投資スタイルは人によって異なるからです。

例えば、ファンダメンタルズ分析を中心とした方法で投資をしたいと考えていても、実はテクニカル分析を中心とした方法の方が利益を出せるかもしれません。あるいは、中・長期的なスパンで投資をしたいと考えている人がデイトレードをしてみると、実はものすごく才能があった、ということもあるでしょう。

投資スタイルは、その人の性格や考え方、自由に使える時間の量などによってさまざまであるため、他の考え方を知らずに一つの考え方に固執してしまうと、結果的に損をする事になりかねません。

最初のうちは、いろいろな方法を学び、試してみることをおすすめします。自分に合った投資スタイルを見つけるには、知識と経験から時間をかけて学ぶ以外に方法はありません。いまの投資スタイルでなかなか利益が出ないのであれば、何か改善すべき点があるはずです。

改善すべき点は柔軟に取り入れ、時には大きな方向転換をすることも視野に入れて、自分自身の確固たる投資スタイルを築いていきましょう。

おわりに

ここで書いてきたことは、株式投資における具体的な方法論ではなく、向き合い方、投資哲学といったものになります。そのため、人によって大きく異なると思いますし、それで構わないと考えています。

しかし、長期的に健全な投資を行うためには、ここで述べたような「自分なりの指針」が誰にとっても必要であることは間違いありません。ここで述べた内容とは異なるとしても、あなた自身の指針に基づいた投資スタイルを確立してください。

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