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ファンダメンタルズ分析が基本

はじめに

基本的な考え方と心構えでも述べましたが、投資を行うためには、企業を詳細に分析する必要があります。そして、企業を詳細に分析するための手段の1つがファンダメンタルズ分析です。

ここでは、ファンダメンタルズ分析とは何か、なぜ必要なのか、という事をまず説明し、次に簡単な分析例を用いて理解を深めます。この記事を読めば「ファンダメンタルズ分析とはどういうものなのか」と言う事をざっくりと理解して頂けると思います。

1.ファンダメンタルズ分析とは何か

ファンダメンタルズ分析とは、株式の本質的価値、あるいは成長性などを確認するために、企業の財務状況や業績状況を表す決算書類をもとにPERやPBR、ROEといったさまざまな財務比率を算出し、企業を分析する方法のことです。主に数値で表現可能であることから、定量的な分析と言えます。

例えば、ある企業の株の購入を検討している場合、その企業のサービス内容や収益構造(何を売って利益を出しているのか)、利益の成長性、財務の健全性など、確認すべき項目がたくさんあります。そうした様々な調査項目のうち、主に定量的な確認、数値化が可能な分析を、ファンダメンタルズ分析と呼んでいます。

2.なぜ、ファンダメンタルズ分析が必要なのか

なぜファンダメンタルズ分析が必要なのかと言うと、それ以外に企業の価値を評価する手段がないからです。

企業の価値は、日々の事業活動を通して蓄積されたノウハウやブランド、人材と言った無形の資産であることがほとんどです。そして、それらは一般には貸借対照表には表れません。貸借対照表に現れるのは、企業の主な資産であるモノ・カネ・ヒト・ノウハウやブランドの4つのうち、モノとカネの2つです。そしてその2つは、どの企業が持っていても同じ価値であり、それ自体の価値は変わりません。

それらの資産を有効活用して付加価値を生み出せるかどうかが企業の腕の見せ所であり、全てと言えます。つまり、誰が持っていても価値の変わらないモノとカネの2つを使って、さらなるカネを生み出し、そしてその一部を投資に回してさらに大きなカネを生みだす…このサイクルを大きくしながら回し続ける集合体、それが企業です。

そして、その過程の中で優秀な人材を獲得し、販売ノウハウや企業独自のブランドと言った無形の価値を蓄積していきます。

では、これらの無形の価値は財務諸表に表れないのかと言えば、そんな事はありません。長い年月をかけて蓄積された企業の価値は、収益力と言う形で損益計算書やキャッシュ・フロー計算書に表れます

図 企業価値の蓄積イメージ

企業には、資金の提供者である株主と、資金の貸し手である銀行等の債権者の両方が要求する利益を上回る利益を上げ続ける事が求められています。

したがって、株主と債権者の要求に応えることが企業の最低限の義務であり、それを上回る利益を出し続けることが出来れば、それは企業の生み出した付加価値であり、企業の超過収益力と言えます。そしてそれらは、企業の1年間の活動の結果として損益計算書とキャッシュ・フロー計算書に記載されます。

そして、企業に付加価値を生み出す力があるのか、超過収益を生み出し続ける実力があるのかを判断するための有効な手段が、ファンダメンタルズ分析となります。

ファンダメンタルズ分析は、財務諸表をはじめとした決算書類を情報源として企業の実力を数値化するものであるため、1つの企業の過去から現在に至るまでの数値の変化を分析したり、競合企業や日経平均と比較するなど、様々な形で分析することができます。

このように、企業の実力を数値化することで、誰が算出しても同じ結果が得られるため、客観的な情報を基に企業を分析することができます。

自分の好きな企業や、自分が実際に投資している企業に対しては、どうしても贔屓目に見たくなりますが、可能なものは全て数値化し、常に客観的な分析を心がけることで、誤った判断をしてしまうことを回避できるようになります。

そういう意味でも、株式投資をする上で、ファンダメンタルズ分析は必須と言えます。

3.ファンダメンタルズ分析の一例

いま、お互いに競合するA社、B社、C社の3社のうち、いずれか1社の株式を購入しようと考えているとします。この時、どの企業が最もファンダメンタルズの観点から優れているのか、という判断のプロセスを、簡単な例を用いて説明します。なお、ここで示す例は、上場企業3社の実際の財務データを使用しています。

ファンダメンタルズ分析を行う場合は、企業の実力を収益性、効率性、安全性、成長性の4つに分解し、それぞれについて比率を算出する事が一般的です。そのため、ここでは競合企業3社について代表的な分析比率を算出し、それぞれの企業の実力がどのように数値で表れているかを見ることとします。また、分析の際は過去10年程度の期間にわたってデータを取ることが望ましいですが、ここでは簡単のため、成長性分析以外は単年度のデータを使用するものとします。

なお、ここでは分析の流れを把握することのみを目的としますので、各種比率の説明などは省きます。各種比率や各種分析に関する詳細な説明は財務比率分析で記述していますので参考にしてみてください。

3-1.収益性の分析例

A~C社の収益性を分析・比較するため、財務諸表のデータから各種比率を算出すると、以下のようになります。

図表 A~C社の収益性分析結果一覧

この図表から、A社は利益がマイナスとなっており、赤字であることが分かります。また、B社、C社はともに黒字となっていますが、利益率の高さで言えば、B社の方が優れています。このことから、2016年度の収益性に関しては、競合3社の中でB社が最も優れていると考えられます。

3-2.効率性の分析例

A~C社の効率性を分析・比較するため、財務諸表のデータから各種比率を算出すると、以下のようになります。

図表 A~C社の効率性分析結果一覧

この図表を見ると、総資産回転率、売上債権回転期間、棚卸資産回転期間の3つの比率については3社で大きな違いはありません。しかし、仕入債務回転期間を見ると、B社、C社はほとんど変わりませんが、A社が圧倒的に長くなっています。

仕入債務回転期間は長い方が良いか短い方が良いかは判断が難しいのですが、今回の例で言えば、A社の利益がマイナスになっていることを考えると、ビジネスのために仕入は行う必要はあるが、利益が出ていないために支払いが困難になっており、結果として仕入債務の回転期間が長くなっていると考えられます。そのため、A社は仕入債務の支払いに苦労していることが想定され、効率が悪いと判断できます。赤字であることが分かります。

次に、有形固定資産回転率では、C社が圧倒的に高くなっています。これは、保有する固定資産を有効に活用して高い売上高を達成していることを意味するため、有形固定資産の稼働率が高く、有効に使われていることを意味します。逆に、A社はかなり低い値となっており、有形固定資産を有効活用できていないことが分かります。

これらのことから、2016年度の効率性に関しては、競合3社の中でC社が最も優れていると考えられます。

3-3.安全性の分析例

A~C社の安全性を分析・比較するため、財務諸表のデータから各種比率を算出すると、以下のようになります。

図表 A~C社の安全性分析結果一覧

この図表を見ると、自己資本比率は3社ともに高い水準を確保しており良好と言えます。また、他の比率を見ても、3社ともに一定以上の水準を確保しており、大きな違いや、明らかに懸念があると言ったこともありません。

これらのことから、2016年度の安全性に関しては、3社ともに一定水準を保っており良好であると言えます。

3-4.成長性の分析例

A~C社の成長性を分析・比較するため、財務諸表のデータから各種比率を算出すると、以下のようになります。

図表 A~C社の成長性分析結果一覧

この図表では、2012年度~2016年度の5年間における、各種指標の年平均成長率を示しています。これによれば、A社は全ての成長率がマイナスになっています。これは、2012年度から売上高や各種利益が全て小さくなっていることを意味します。上でも見たとおり、A社の2016年度の利益はマイナスとなっています。

B社、C社は5年間で売上高、各種利益額が全て成長しています。特にC社は、純利益が毎年平均で18.7%成長しており、高い成長率を達成しています。

これらのことから、2012年度~2016年度の成長性に関しては、競合3社の中でC社が最も優れていると考えられます。

3-5.分析結果の総括

ここまでの分析結果を総括すると、以下の表のようになります。

表 分析結果総括

この表からも分かるとおり、A社はほぼ全ての分析結果から投資対象としてはふさわしくないと判断できます。また、B社、C社はどちらも優れた実力を有していると考えられるため、実際に投資対象を選ぶ際はより詳細な分析をしてみないと判断が難しいと言えます。

しかし、仮にここで示した内容のみから判断しなければならないとすれば、全体的に良好な成績を収めており、かつ直近5年の成長が最も著しいC社が投資対象として最も優れていると考えられます。

ここで示したのは簡単な例ではありますが、このように企業の実力を分解して数値化することで、客観的な分析が可能となります。また、上でも述べたとおり、実際に企業を分析する際は、過去10年程度のデータを確認することが望ましいと言えます。それにより、その企業の本当の実力が分かります。

4.ファンダメンタルズ分析を行うために必要な資料

先にも述べたとおり、ファンダメンタルズ分析を行うための主な資料としては財務諸表が挙げられますが、これは上場企業が年に一度作成・提出を義務付けられている有価証券報告書の中で確認することが出来ます。

有価証券報告書の他にも、企業を分析する上で参照すべき資料はいくつかあります。

例えば、企業が四半期ごとに提出している決算短信四半期報告書、あるいは、株主総会などで経営者が株主に対して説明するための資料である説明会資料(資料の名称は企業により異なります)などです。これらはほとんどの場合、その企業のホームページから確認することができます。

上で述べたとおり、企業を分析するための資料はいくつかありますが、企業を深く知ると言う意味において、有価証券報告書に勝る書類はありません。したがって、まずは有価証券報告書をしっかりと読み込むことが大切です。

とは言っても、有価証券報告書は、その企業の1年間の活動にかかわる全ての情報が記載されているため、かなりのボリュームになります。100ページを超える企業も少なくありません。

そのため、その全てを確認しようとするとかなりの時間を要します。もちろん、全ての情報に目を通すに越したことはないのですが、現実的に考えて不可能でしょう。

そこで、当サイトでは、有価証券報告書をはじめとした各種資料で見るべきポイントや分析方法について詳細に説明し、個人の投資家の方が企業分析をするための方法を紹介しています。財務諸表や有価証券報告書の分析については決算書類の分析で詳しく説明していますので、参考にしてみて下さい。

他にも、企業を定性的な側面から分析する定性分析や、株式投資を学ぶ上で有益なおすすめの書籍など、さまざまなコンテンツを用意していますので、まずは当サイトを使い、企業分析の基礎をマスターして下さい。

おわりに

ファンダメンタルズ分析について、その概要と必要性についてなんとなく理解して頂けたでしょうか。

株式投資で利益を出し続けるためには、会計学やファイナンス、心理学などさまざまな事を学ぶ必要がありますが、核となるのはファンダメンタルズ分析だと考えています。

きちんと企業を分析することができれば、他の知識はないよりはあった方がよい程度の位置づけです。

当サイトでファンダメンタルズ分析の方法をマスターし、元本の安全性を守りつつ、適正な収益を上げ続けられる投資家を目指しましょう。

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