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企業価値の定義

はじめに

ここでは、企業価値とは何か、どのような式で表されるのかという事について述べます。この記事を読めば、企業価値は一見複雑に見えて、実は極めてシンプルな公式で表せることが理解して頂けると思います。また、公式を紐解くことで、企業価値を算出しやすい企業とはどのような企業かという事についても触れています。

1.企業価値の定義

企業価値という言葉を教科書的に定義すると、以下のようになります。

企業価値とは「その企業が将来にわたって生み出すキャッシュフローの現在価値」である。

企業価値を評価する上で最も一般的な方法はディスカウントキャッシュフロー法(DCF:Discounted Cash Flow)と呼ばれるもので、ディスカウントは「割り引く」、キャッシュフローは「現金流量」という意味です。つまり、DCF法を日本語で書くと、「(将来生み出される)現金流量を(現在の価値に)割り引く方法」ということになります。なお、DCF法は企業価値だけでなく、ありとあらゆる資産の価値を評価する方法として使用できます。

図 企業価値のイメージ

企業価値の話をする際によく使われる例ですが、金の卵を産む伝説のニワトリを例に考えてみます。

毎年安定して金の卵を産むニワトリがいると仮定して、そのニワトリの価値はいくらでしょうか(なお、そんな素敵なニワトリがいたらただちに投資を辞めて一生大切にします)。焼き鳥にして食べてしまうファンキーな人もごくまれにいることと思いますが、ほとんどの人はニワトリに毎年金の卵を産んでもらい、それを売るなどして生活の足しにするのではないでしょうか。

ここで、その伝説のニワトリを売って欲しいと言う人が現れたとします。その場合、いったいいくらで売るべきでしょうか。この答えを出すことと企業価値を出すことは、考え方としては同じです。そして、企業の株を買うという事は、毎回この問いに対して自分なりの答えを出しているということになります。つまり「企業の価値はどの程度か?それに対して株価は割安か?」という事を暗黙のうちに自分に問いかけ、割安であると判断できた時、株を購入することになります。

この問いに正確に答えるためには、企業価値を構成する3つの変数を設定する必要があるのですが、その話をしようとすると長くなるため、ここでは触れないこととします。詳しくは企業価値を構成する3つの変数で説明していますので、この記事の次に読んでみて下さい。

2.企業価値の算出式

企業価値は、以下の式で算出することができます。

ここで、各変数の説明は以下のとおりです。

  • PV:Present Valueの略で、企業価値のことです。
  • C:企業が現在生み出しているキャッシュフローです。企業が生み出すキャッシュとして考えられるのは税引後当期純利益、フリーキャッシュフロー(FCF)などいくつかありますが、一般に使用されるのはFCFです。
  • r:discount rateの略で、割引率のことです。割引率は投資のリスク、あるいは期待するリターンによって設定されるため、risk/returnの略と考えることもできます。また、割引率は投資家から見れば期待収益率のことであり、企業側から見れば資本調達コストと言えます。
  • g:growthの略で、企業の将来の成長率のことです。

なお、ここでは企業価値という概念をざっくりと理解することを目的とするため、なぜ上の公式で企業価値が算出できるのかということについての説明は省略します。また、各変数の説明も簡単に触れる程度に留めています。どちらも長くなるためです。これらについては先ほどと同様企業価値を構成する3つの変数で詳細に解説していますので、参考にしてみて下さい。

今はまだしっくりこないかもしれませんが、上の式で企業価値が算出できると考えると、思ったよりもシンプルだと驚かれたのではないでしょうか。もっととてつもなく複雑な式が出てくることを期待された方には申し訳ありませんが、企業価値とは究極的にはこれだけです。

ここでは、現在生み出しているキャッシュフロー(C)、割引率(r)、将来の成長率(g)の3つを設定できれば、企業価値は算出できるということを覚えておいてください。

3.企業価値を算出しやすい企業とはどのような企業か

これまでの説明で、企業価値PVを算出するためには、企業が現在生み出しているキャッシュフロー(C)、割引率(r)、将来の成長率(g)の3つの変数が必要であることが分かりました。この3つの変数のうち、Cについては現在のキャッシュフローであるため、有価証券報告書などから算出できそうです。残りは割引率(r)と成長率(g)です。この2つを設定できれば、企業価値はざっくりと算出することができます。

ここで、割引率(r)については、厳密に設定しようとするといろいろとややこしいのですが、上で説明したように割引率=期待収益率であることを考えると、投資家の視点からは「投資にはリスクがあるのだから、少なくともこのくらいのリターンを期待できなければ投資はしない」という1つの判断基準であることを意味しており、自分の期待する割引率(=期待収益率)を設定しても良いことになります。

また、あまりにも現実離れした数値を設定してしまう(つまり、あまりにも高い収益を望んでしまう)と、企業価値を算出して理論株価を算出しても、実際に市場で取引されている株価から大きくかけ離れてしまい、割安や割高の判断をする上でも役に立たない可能性があります。

このような場合は、過去の実績から「だいたいこのくらい」という標準的な値として、7%というものがありますので、概略的に企業価値を算出する際は、この数値を基準としてもよていかもしれません。いずれにしても、割引率(r)についても自分次第で設定可能と考えることができそうです。

そうなると、残るは将来の成長率(g)のみです。ただ、こればかりは好きな値を設定するわけにはいきません。成長率(g)は企業の業績に100%依存するからです。企業の業績が伸びていれば成長率はプラスに、業績が下がっていれば成長率はマイナスになります。また、年度によって業績が大きく異なる企業は、一貫性がないため成長率を設定することは困難です。

このように考えると、企業価値を算出しやすい企業というのは、成長率が設定しやすい企業、つまり、安定して成長している企業という事になります。

機関投資家などのプロは、担当の企業がたとえどのような企業であっても企業価値を算出する必要があるため、難しい理論を駆使して多くの計算をしなければなりませんが、自分の資産を自分の責任の範囲内で投資に充てている個人投資家は、業績が年度によって大きくばらつく不安定な企業を評価する必要はありません。

おわりに

ここで説明してきたとおり、企業価値はシンプルな公式を用いて表すことができます。また、安定して成長している企業にかぎり、企業価値をざっくりと算出することができます。そして、株式投資をする上では安定して成長している企業にのみ投資をすることを心がけるため、全ての企業の価値を算出できなくても問題ありません。

ここで説明した内容を踏まえ、次は企業価値を構成する3つの変数を読んでみて下さい。企業価値についてより深く理解して頂けると思います。

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