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企業価値算出時の注意点

はじめに

ここでは、企業価値を算出する際の注意点について述べます。企業価値を構成する3つの変数などで紹介した方法は、細かい箇所や難解な手順を全て省いて簡略的に企業価値を算出しているため、そのようにして算出した企業価値の正確さを保証することはできません。そのため、それを踏まえた上で誤差を吸収するために安全域を必ず設けるということをここでは述べていきたいと思います。

1.安全域を必ず設ける

当サイトで紹介している企業価値の評価方法はかなりの部分を簡略化しています。そのため、機関投資家などの専門家からすれば、いくらなんでも省略しすぎだと否定されるかもしれません。

しかし私は、個人投資家が株式投資をする上ではむしろこれくらいざっくりと算出する方が良いと考えています。他の記事でも何度も言っていますが、難しいことをしようとすると必ずミスが起こります。また、自分の都合のいいように数値を設定してしまうこともあります。

株式投資をする上で大切なのは①ざっくりと全体像をつかむこと②いつも保守的に考えること③自分の中である程度の根拠を持った上で投資判断を下すこと、この3つだと考えています。

ざっくりと全体像をつかんでも、それはあくまでも簡易的な評価に基づいたものであるため、実際の値とは乖離しているかもしれません。かといって、複雑な計算をしようにも、まず難しいですし、複雑な計算過程でミスを誘発します。そしてなにより、手間がかかりすぎます。そのため、あまり時間はかけられないけどある程度の基準は欲しい…。そこで登場するのが安全域という概念です。

これは売買のタイミングでも紹介していますが、要するに、簡易的に計算すると誤差が出るので、それを吸収するために常にいくらか割り引いておこうというものです。

図 安全域の概念

どの程度割り引くかはその都度判断の分かれるところですが、私は最低でも10%は割り引くようにしています。

私を含め、多くの個人投資家はどうしても願望が先に立ってしまうので、よく知らない企業であっても「上がりそうだ」という期待感から決して小さくない資金を企業に投じてしまいます。しかし、この「上がりそうだ」という期待は、多くの場合「上がって欲しい」という単なる願望です。

  • 昨日大きく下げたから、近日中に上がるだろう。
  • PERが10倍と低いから、そのうち上がるだろう。

上に挙げたのは、投資をする際によく顔を出す願望たちです。しかし、これらの願望にある程度の根拠を付け加えることができれば、願望は期待に変わります。

  • 決算は良好であるにも関わらず昨日大きく下げた。これにより実際の株価が理論株価を大きく下回ったので、近日中に上がるだろう。
  • DCF法の考え方とPERの両方を用いて株価の割安判定をしてみると、市場の評価と企業の実際の成長率には明らかな乖離が見られる。PERが10倍と市場は評価しているが、実際には15倍程度でもおかしくない。したがって、この株価は割安に放置されていると考えられるため、そのうち上がるだろう。

このように、ざっくりと算出した企業価値に常に安全域を設けて保守的に考えておき、その評価結果をもとに株式投資を行えば、上で示したようにある程度の根拠を持って株を購入することができ、短期間で大きな損失を出すリスクを抑えることができます。

2.シンプルに考える

上の内容と重複しますが、どんなことでも、何をするにも、シンプルであることに越したことはありません。シンプルであればあるほど、ミスをする機会も減り、難しいことも簡単に考えられます。

企業価値の算出に限らず、過程が複雑であればあるほどなんだか正しい気がするという思考に陥ってしまいがちですが、どんなことでも単純であるに越したことはありません。「こんなに簡単なわけがない」、「もっと難しい計算をしないとなんだか不安だ」といった考えがどうしても頭から離れないものですが、それは勘違いです。

むしろ、複雑に考えなければ答えが出ないのであれば、それはおそらく業績が不安定で事業内容も複雑な企業なので、分析を辞めてしまって良いと思います。

仮に、複雑な算出過程を経てそれらしい答えをひねり出したとしても、それが正しいことを確認する手段がありません。また、苦労して算出した答えが正しいと思いたい気持ちは分かりますが、苦労したことと正確であることは関係がありません。

くどいようですが、何事もシンプルに考えることをおすすめします。投資先の企業を探す時もシンプルで簡単な事業をしている企業を探すと良いですし、貸借対照表などに計上されている項目も少ない方が分析しやすいので良いです。そうした企業は業績も安定していることが多いように感じます。

シンプルに考え、安全域を設ける。これだけで良いと思います。

おわりに

ここで書いてきた内容を主張することには勇気がいります。全てがこの考えでうまくいくわけではないからです。しかし、安全域を設けることと、シンプルに考えることの2つは、企業価値を算出する上で欠かせないものであると個人的には考えています。全ての投資家の方に納得してもらえるわけではないでしょうが、どなたかの参考になれば幸いです。

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